スターフリート/Bの話

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スターフリート/B

昔、遊んだパソコンゲームの中で特に衝撃的だった作品がこちら。

テクノソフトの「スターフリート/B」です。自分はPC−6001mkII版を遊びました。

スターフリート/Bはスタートレック系のゲームです。ここでいうスタートレック」はゲームのジャンルのことです。全盛期には数多くのソフトハウスからスタートレックが発売されました。著作権の意識が低かったころの時代です。

スターフリート/Bは他のスタートレックとは違って、とにかく斬新でした。

表示は「本物の3D」。「オリオン」みたいな単一方向じゃなくて、プレイヤーがあらゆる方向に移動が可能です。しかもリアルタイムで進行します。これは実際の宇宙空間を飛び回っているかのような衝撃的なプレイ体験でした。とにかく3Dが珍しかったので、今、遊んだら全く感動しないかもしれません。

 

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マイコンソフトの広告(ベーマガ1984年1月号より)

ほぼ同時期にマイコンソフトでもスタートレックを販売していました。

題名は「リアルタイム SUPER STAR TREK」。この作品はFORESIGHTというマイコンサークルで沼田裕さんが開発されています。アスキーの「トレードトレック」もこの方です。

 

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当時の広告(ベーマガ84年10月号)

1984年当時のテクノソフトの広告。

ページの上半分を「プラズマライン」が占めていて、残ったスペースに小さく載ってます。本作は最初にMZ-80B版がリリースされて、移植を繰り返すうちに表現力がパワーアップしていったという経緯があります。この時点でもうMZ-80B版がありません。

あと、スターフリート/Bの「/B」の意味がいまだにわからないです。パッケージを見ると、/Bがないのが正しいみたいですが、個人的に違和感があるので/Bを付けて書きます。

 

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スターラスター(ナムコアンソロジー1より)

数年後、1985年にナムコが「スターラスター」を発売。

当時は「スターフリート/Bをパクった!!」と思ったのですが、実際は1979年にAtariが発売した「Star Raiders」のリメイクでした。そして、Star Raidersはスタートレックの影響を大きく受けています。元ネタがすべて同じです。

 

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Atari Vaultにも収録

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Star Raiders(Atari 2600)

Star Raidersは「Atari Vault」にも収録されています。これは1979年発売のAtari 400/800版じゃなくて、1982年発売のAtari 2600版でした。Atari 2600版は力作ですが、性能が追い付いていないです。

これを見て、スターラスターを連想するのは難しいかも。

追加コンテンツのAtari 5200版のほうがグラフィックは綺麗です。

 

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Stellar Track(Atari 2600)

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Stellar Track

この他、1980年にAtari 2600用として発売した「Stellar Track」というゲームもあります。表示はテキストのみ。まぎれもないスタートレックです。

 

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Tinyスタートレック  ver.1.0

話が前後しますが、オリジナルのスタートレックについて紹介します。検索したところでは、スタートレックは1971年から存在していたようです。コンピュータが全くパーソナルじゃなかった時代です。

さらに元ネタをたどるとウォーゲームがあって、さらにボードゲームの「海戦ゲーム(Battle ship)」に行きつくと思います。wikipedia情報だとBattle ship風のボードゲームは1930年代から商品化されていたそうです。Battle shipは軍人将棋の「ストラテゴ」の影響があるとも書かれてますが、これ以上、元をたどるとキリがありません。

上の写真はVectorで公開されている「Tinyスタートレック」。1993年公開。これは、1977年に石田晴久先生の「マイクロコンピュータの活かし方」に掲載していた「Tiny Trek」をeyesさんという方が移植したものです。自分は石田先生の翻訳した本でC言語を学びました。

 

www.atariarchives.org

1978年には「BASIC COMPUTER GAMES(Microcomputer Edition)」という本で「Super Star Trek」が掲載されています(日本語版は1979年)。現在、本の内容は合法的にアーカイブ化されていますツクモ電機の「スーパースタートレック」よりも、こっちが先です。この本によると、作者さんが1967~68年ごろに大学でスタートレックを遊んだと書かれてて、wikipedia情報と食い違う。コンピュータじゃなくてウォーゲーム版という意味?

1978年にはApple II用に「Apple II trek」が登場。プログラムがBASICなので、容易に移植が可能でした。

 

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ハドソンの広告(月刊マイコン1979年7月号より)

1979年に「月刊マイコン」に掲載されたハドソンコスモス札幌/ハドソン丸井今井店の広告。「おなじみの」と書かれているので、この時点でスタートレック知名度は相当なものだったと思います。

他にも、TK-80やプログラム電卓で動くスタートレックがあるのですが、よく知りません。

 

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敵戦艦に攻撃が命中!!(この熱さが伝わるでしょうか?)

MSDOS Player(msdos.exe)を使って「Tinyスタートレック」を遊んでみました。コマンドプロンプトを起動して、「msdos strek.exe」を実行します。

ゲームの進め方ですが、大ざっぱにいうと

  • 敵を探す。
  • 敵に近づく。
  • 敵を撃つ。

、、、の繰り返しです。「それで面白いの?」と思われるかもしれませんが、プレイヤーが得られる情報が限られているので、頭を使って敵の位置を予想する必要があり、それが面白いところです。残り時間が減ったり、センサーが故障したり、残弾が減ったり、トラブルが発生して緊張感を高めてくれます。狙いどおりに敵を見つけて、攻撃が当たることの気持ち良さ。

情報が限られてるというコンセプトはテキスト画面とマッチしています。

 

遊んでみて思ったのですが、「情報が限られている」「敵の位置を予想する」というのが、スタートレックの特に重要な要素だと感じます。

そう考えると、スターラスタースタートレック要素が抜け落ちてしまってます。敵の位置がゲーム開始時からバレバレです。その代わり、ゲームがスピーディーに進むので、一長一短なのかなという気がします。

一方、スターフリート/Bはスタートレック要素がかなり残っています。センサーで探索しないと敵の位置がわかりません。ただし、メッセージ表示が遅いし、座標入力はキーボードだし、進行が遅いのが難点です。今、プレイすると、イライラするかもしれません。

スターフリート/Bみたいなゲームを今、快適な状態で遊んでみたいです。