ソル・フィース for X68000の話

プロジェクトEGGで配信中の「ソル・フィース(1990年)」を遊んでみました。X68000用のシューティングゲームです。

その昔、パソコンでアクションゲームを作ることはあまりに無謀な行為であり、技術的なチャレンジでした。見果てぬ夢ともいえます。しかし、X68000の登場で事態が一変。以後は、フラストレーションを爆発させたような、X68000専用ゲームがリリースされ続けました。そうした中の一作です。

本作の最大の特徴はあのBug太郎さんがプログラムを担当したということ。ベーマガ1991年1月号に「ベーマガの卒業生が作った」と紹介されたり、ベーマガ1993年4月号にクリエイターインタビューが載っているので、ご存知の人も多いと思います。

あと、「みんながコレで燃えた! NEC8ビットパソコン PC-8001PC-6001 永久保存版(2005年)」にBug太郎さんのインタビュー記事が載っているので、参考になると思います。

 

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この敵が凶悪

ゲーム内容は説明不要だと思います。ボタン押しっぱなしで遊べます。一見すると、フレンドリーなゲームです。

しかし、実際はとてつもなくプレイヤーに厳しいです。

たとえば、上の写真は2面に登場するキャラクターですが、当たり前のように「撃ち返し弾」を発射してきます。もう「グラディウス」の2周目のような難易度です。

 

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よくわからないうちに死亡

この敵、画面左側で果てしなく居残り続けます。画面右側に居る時に倒さないと詰む仕掛けです。

敵と弾がダイナミックすぎです。調整をミスってるんじゃないかと思うくらい。全てが倍速で動いているように感じます。

この作品、多関節とか、回転表示とか、巨大キャラとか技術的な見どころが一杯あります。謎技術の領域ですね。X68000の限界を超えてるような場面もあります。X68000には回転機能も拡大機能もありませんので、自前の技術でソフト的に実現しないといけません。

 

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当たったら死ぬ爆風

3面はこんな感じ。どんどん凶悪になっていきます。赤い背景に赤い爆風。これに当たると死にます。

4面も凶悪ですが、コンティニューを繰り返すとどうにかクリアできました。

 

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この敵、凶悪すぎる

5面。ここから先はお手上げです。

高速スクロールで障害物をかいくぐっていく中で、レーザーと弾が降り注いで、さらに背後から敵が追い打ちしてきます。掟破りすぎる。イメージファイトみたく、自機は噴射で反撃できるらしいのですが、そういう重要な機能は説明書に書いて欲しかった。

 

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個人的に、ここが限界

いろいろ文句言いながらも5面ボスまで来ました。攻撃を避けるのに忙しすぎる。

前々回に「グラディウス2が難しすぎ」と書いてしまいましたが、こっちがさらに上です。ステートセーブに非対応なのがツライ。無限にコンティニューできるのが良心的ですが、心が折れます。

恐ろしいことにこれが難易度ノーマル。イージーはありません。ここからさらに上の難易度が存在します。

 

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2面の中ボス。側面の文字に注目

ついでに紹介しておくと、2面に登場する中ボス。

意味はわかりませんが、側面に小さく「TRZZ」と書かれています。

 

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「FULL-FIRE」。ベーマガ1990年10月号が初出。

同じような文字が「FULL-FIRE」の1面のボスにも書かれてます。

これが掲載されたのがベーマガ10月号(9月売り)なので、「ソル・フィース」よりも2か月ほど先です。並行して作っていたのでしょうか。恐るべき創造性です。

上の画面は「みんながコレで燃えた! ~」収録のバージョンです。エンディングのメッセージがオリジナルと違います。

ベーマガのイベントではFM音源対応の「FULL-FIRE」を公開して、会場を驚かせました。

 

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「GIVERS」。ベーマガ1989年3月号より。

「ソル・フィース」から脱線しますが、ついでにBug太郎さんの投稿作品「GIVERS」を紹介しておきます。プチコン4のPC-8001エミュレータで動かした画面がこちらです。プログラムはベーマガ片手に頑張って入力しました。

この時点でもう多関節の表現を取り入れてるのが、さすが。

 

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「GIVERS P3D」。プチコン4で配信中

「GIVERS」は作者ご本人の手によって大幅にアレンジされて、「GIVERS P3D」としてプチコン4版が公開されています。アングルが替わったり、デモシーンがあったり、非常に手が込んでます。これをタダで遊んでいいのかという気になります。

当然のようにポリゴンが動いてますけど、「プチコン4」にそんな機能はありません。3Dのツールも公開されているので、スキルがある人は応用できるのかもしれません。

 

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「Bug太郎のプログラム・タイム」。ベーマガ1993年4月号より

Bug太郎さんは過去にベーマガ「Bug太郎のプログラム・タイム」という連載を書かれていたのですが、その4回目のテーマが「三次元グラフィックス」でした。この技術が「GIVERS P3D」に活かされているような気がします。気のせいかもしれませんが。

これが掲載されたタイミングが、メガドライブ用の「エクスランザー」の発売の約2ヶ月前です。Bug太郎さんは「エクスランザー」では3Dプログラムを担当しています。

 

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「DRAGON 'N' SPIRIT」。ベーマガ1987年10月号が初出

(どんどん「ソル・フィース」から脱線しますが、)

友人が勝手に送ったという「SPACE 'N' HARRIER(1987年8月号)」を経て、1987年10月号に「DRAGON 'N' SPIRIT」が掲載されました。元ネタであるドラスピがベーマガの表紙を飾ってから、わずか3か月後。Bug太郎伝説の始まりです。

現在、「DRAGON 'N' SPIRIT」はプロジェクトEGGで配信中です。会員ならタダで遊べます。こういうパロディ的なのが許されるのは凄いこと。この作品は、メインルーチンをBASIC で処理しているのでかなり重たいです。

 

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N-TYPE(ベーマガ1988年4月号掲載)

この後、「N-TYPE」が1988年4月号に掲載されます。前作よりもマシン語の比率を増量。劇的に技術力がアップしているのが凄いところ。「N-TYPE」はページに誤植があって、追加のプログラムが1988年5月号に載っているので注意しましょう。

2回目のベーマガイベントではオールマシン語による「N-TYPE II」が公開されました。

 

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プログラムリスト

「DRAGON 'N' SPIRIT」の起動直後にスクリーンショットを撮ろうとしたら、処理が止まってしまいました。原因はよくわかりません。

「OK」と表示された状態で、カーソルキーが点滅しています。

ここで「list」と打ち込んでみたら、プログラムリストが表示されました。当たり前ですが、Bug太郎さんのお名前があります。PC−8001に触ったような気分を味わえて、得した気分になりました。