「だから いま マイコン」を読みました。送料込みで古本が801円。発行はマイコン(パソコン)とは縁のなさそうな集英社。
本書の著者は東大マイコンクラブの学生6名(イラスト担当を含めると7名)です。学生だけでマイコンの本を一冊書くというのが不思議ですが、マイコンは超最先端の技術だったので、書ける人が限られていたのだと思います。企画を進めるのに東大のブランドは有利だったのではないでしょうか。
これは活字の本で、漫画ではありません。アラレちゃんは表紙だけ。イラストや写真は豊富です。漫画的な内容を期待すると肩透かしを食らいます。
あとがきによると仲間内で僕らのアイドルはアラレちゃんだという話が起きて、鳥山明さんに依頼したと書かれています。が、不自然なので、低年齢層にアピールするため、集英社側が提案したんだと思います。
どことなく「こんにちはマイコン(1982年)」を連想します。
発行は1981年10月。「こんにちはマイコン」が出る、およそ1年前です。
本の内容は、以下の通り。
・マイコンの基礎的な知識。F-16フライトシミュレーターの画面がカラーで載ってます。
・東大マイコンクラブについて。部員は40名。「平安京エイリアン」を作った「TSG」はライバル的な存在。
・自作のゲームについて簡単に紹介。「万引少年」「万引少女」「サテライトコマンド」「ブラックホール」。
・BASIC言語のコマンド紹介。
・各社のマイコンや雑誌(I/OやASCII、RAM、マイコン)の紹介。
・太田裕美さん。
など。当時としては貴重な情報源だったんじゃないでしょうか。
ゲーム紹介はあっさりで、画面写真が載っているのは「万引少年」だけです。
「サテライトコマンド」がなんだかわからない。
「ブラックホール」はAX-4のものと同じでしょうか?
あと、本の中で何度か太田裕美さんという歌手の顔写真や名前が出てくるのですが、ファンだからという理由で無理やり出してますね。
「みんながコレで燃えた(略)」のインタビューによると、集英社の雑誌「週刊プレイボーイ」が太田裕美さんを連れてマイコンクラブを取材する企画があって、ここで、部員の方々はリアルで会うことができたそうです。執筆陣の若さを感じます。
そして、太田裕美さんが好きすぎて、三橋正邦さんの作者名が「大葉浩美」となります。この傾倒ぶりが「シルフィード」の名曲を生んだと思うと興味深いです。「みんながコレで燃えた(略)」で大葉浩美を女性だと思ってる人がいると書かれていますが、AXのデモでメッセージにハートマーク使っているので、勘違いするのも当然か。
国会図書館で複写した「月刊RAM」1980年2月号の表紙です(実物はカラー)。
PET2001用「万引少年」が掲載されています。筆者は東大マイコンクラブ(ゲーム開発事業部)鈴木浩さん。
「万引少年」は1979年の駒場祭で大人気。
翌年、1980年の駒場祭ではバージョンアップした「万引少女」というゲームを公開したそうですが、どのような画面かわかりません。合成音声に対応したとあるのですが、PC-6001は発売していないので、どうやって実現したのか気になるところ。
AXシリーズの実名と記載名については、morさんという方の「OLION UNTIMANIA」というサイトに情報がありました。
作者のインタビューまで載っています。「みんながコレで燃えた(略)」より内容が充実しています。
これを読んで知りましたが、「万引少年」を作った鈴木さんは第一回I/Oプログラム・コンテストで最優秀賞を受賞した「ザ・コックピット(月刊I/O 1984年4月号)」の作者さんだそうです。フライトシミュレーターは「だから いま マイコン」にも登場しているので、そこから3年以上かけて洗練したものを応募したということになります。
確認したところ、「だから いま マイコン」の著者6人のうち、AXシリーズの開発に関係しているのは4人ですね。私が見落としている可能性がありますが。この中でゲームアーツに関係しているのは1人だけでした。このへんの情報をハッキリさせたかった。
「みんながコレで燃えた(略)」に登場するAXシリーズ関係者の現在を見ると、大手電機メーカー勤務とか、公共事業を指揮する公務員とか、朝日ネットの重役とか、恐ろしく手堅いお仕事をされてますね。さすが東大。ゲームから手を引くのが当然と感じます。
最後に「みんながコレで燃えた(略)」に収録されているゲーム画面を一部紹介します。
(2021/11/11追記)
これは大好きでよく遊んでました。緊張感が素晴らしいですね。壁を叩く音を聞くと、「白子のりください」っていう当時のTVCMを思い出すのですが、今だと誰にも通じない。
先の「OLION UNTIMANIA」のインタビューによると、元々は滝口さんがPET2001用に作ったものと発言されています。