プロジェクトEGGで配信中の「暗黒星雲 for FM-7(1983年)」を遊んでみました。ジャンルはアドベンチャーゲーム。本作はスターアーサー伝説シリーズ(全3部作)の2作目です。
「暗黒星雲」はその昔、中学生だった頃にPC-6001mkII版をクリアしています。当時、参考にしたのが「チャレンジ!!パソコンAVG(1985年)」でした。FM-7版は未プレイなので、買ってみたわけです。
以下、内容をネタバレしますのでご注意ください。
ゲームは前作の最後からスタート。すぐにクラプトンII(宇宙船)に乗り込みます。
FM-7版は絵がキレイで、表示が早いです。
その昔、PC-6001mkII版を遊んだ時はあまりにも表示が遅すぎて、バグったのかと思ってしまいました。
「高速3-Dルーチンを駆使したリアルタイムスペースファイトシーン」(広告より)。
このアクションゲームのパートは3回くらいあります。
敵機を破壊後、脱出カプセルを回収すると、「ルナ」が仲間に加わります。
最初にすべきことは「右CTRL」を押してカナ入力モードにすること。ローマ字入力できません。
TALKモードで何を打ち込んだらいいのか見当がつかないです。「レイソード」「ミステリウム」「アンコクセイウン」とか打ち込みます。
この後、宇宙船でワープを繰り返すのですが、アルタイル、アンドロメダ、エリダヌス、カシオペア、ケフェウス、ケンタウルス、ジェミニ、シリウス、ヒアデス、プレアデス、ベガ、ペガサス、ヘルクレス、ペルセウス、、、と、延々と入力するだけ。どう遊んでいいかよくわからない状態が続きます。
やっと難破船を見つけたので、ドッキング。
「タタク」「ウツ」「ツケル」「ハイル」「シラベル」などのコマンドはファンクションキーに登録されていて便利です。
やるべきことはよくわかっているのですが、空回っている状態が続きます。間違ったコマンドを打ち込むと反応がない。イライラが蓄積します。
ここで、奥の部屋に入れなくて、「ススム」とか「イドウ」とか入力したのですが、どれも反応なし。しばらくして、カーソルキーの「↑」を押すだけだと気が付きました。
廊下に戻るのも「デル」とか「モドル」とか打っていたのですが、カーソルキーの「↓」を押すだけで良かったです。
ロボットの修理に成功したらクラプトンIIに戻るだけです。
なにか重要な情報を喋ってくれるかと思ったら、特にそんなことはありません。
その後、ワープを繰り返すと、別の難破船に遭遇。
こういう3Dグラフィックって、横山英二さんは大好きなんですね。
バーチャルボーイ用の「レッドアラーム(1995年)」は横山英二さんがプロデューサーでした。
このゲーム最大の見せ場、「本邦初!恐怖の4分割画面」(広告より)。
リアルタイムになっているので、入力が遅いとエイリアンに食われて死んでしまいます。
この緊張感が素晴らしいです。
中学生の頃、ここで一旦ゲームを放り出しました。それから、3か月くらい経って、クラスメートが家にやってきて、エイリアンの倒し方を実演してくれました。
船内をマッピング。今回はノーヒントで解く意気込みだったのですが、何をしたらいいのか、わからなくなってしまいました。
ここでギブアップ。
ググったら、正解はクラプトンIIに「モドル」だけでした。
この後、またまた何をしたらいいかわからなくなってしまう。
ワープを何度繰り返しても進展なし。オリオンが怪しいを思って、いろいろ試したのですが、効果なし。
しかたないので、2度目の検索。結果、ジークの行き方が判明しました。
ジークに到着。
ボブがアリ地獄に落ちてしまいますが、超難解コマンドで助けます。「タスケル」「ヒク」「ヒッパル」とか入力してました。
広告でよく見たシーン。宇宙怪獣?ですが、首輪が付いてる。
もう、このあたりからゲームは一本道です。
バリアーが行く手を阻みます。
コマンドを打ち込みまくったら、なんとかなりました。
思い付きの行動が成功すると、アドベンチャーゲームは楽しいです。
「オミャー スターアーサー デ ニャーカ!?」
得意の名古屋ネタです。
この場面、エレベーターの開け方がわからず、検索で解決。
敵に対面。あと2画面で終了です。
結局、クリアまで3回ほどGoogleのお世話になりました。2021年にプレイすると、さすがに不親切と感じる場面が多いです。当時のアドベンチャーゲームはコマンドを入力できるかどうかが全てでした。コマンドがわからないと一生解けません。逆にスラスラ解けたら、まったく面白くない。このさじ加減の難しさ。
あと、ストーリー的な盛り上がりが欠けているような気が。ルナさんの出番がなかったのも不満。
まあ、当時は楽しくプレイしたという事実は揺るがないです。
1985年当時のT&E SOFTのチラシ。当時のアドベンチャーゲームは今のバーチャルリアリティーに匹敵するくらいの衝撃でした。それが伝わりますでしょうか?
自分の場合、アドベンチャーゲームの存在は「こんにちはマイコン2(1983年8月)」で知りました。漫画内では「ミステリーハウス(1982年)」が大々的に取り上げられていて、ドアを開けるコマを読んだだけでワクワクしました。「こんにちはマイコン2」では「アドベンチャー・ゲームはプログラムの量が多いため、フロッピーディスクで売られているものが多い。」と紹介されていました。実際、アドベンチャーゲームはディスク版が多く、一般人には手が出ない超高級なジャンルという印象でした。
そうした中、ハードルを下げてくれたのが、カセットテープ版のアドベンチャーゲームです。「ポートピア連続殺人事件(1983年6月)」「デゼニランド(1983年9月)」「惑星メフィウス(1983年7月)」などが、ほぼ同時期に発売されました。容量不足をカセットテープの分割ロードで補うという、力業です。
「惑星メフィウス」はお買い得感(テープ3本組)と超大作っぽさが手伝って大ヒット。最終的には、PC-88版、FM-7版、X1版、PC-6001mkII版、MZ-1500版、MSX版、S1版、VHD版が発売されました。
約半年後に2作目「暗黒星雲(1983年)」が発売されます。FM-7のディスク版は1984年2月発売です。
それから約1年後、3作目「テラ4001(1984年)」が発売。システムを大幅に見直した意欲作でしたが、対応機種はFM-7版とPC-6001mkII/6601版だけでした。シリーズを最後まで遊べなかったプレイヤーも多かったんじゃないでしょうか。
1986年付近からフロッピーディスクが普及し始めて、カセットテープの作品が時代遅れになってしまいます。さらにアドベンチャーゲームのシステムが改良されていきます。スターアーサー伝説シリーズと同社の「サイオブレード(1988年)」を見比べてみると、ゲームの進化の激しさがわかると思います。
当時の雑誌から、T&E SOFTの人気ぶりがうかがえます。
雑誌「ログイン」1983年11月号では「スターゲームデザイナー登場!」のコーナーで横山俊朗さんと横山英二さんのインタビューが紹介されています。この時点でスターアーサー伝説が3部作であることが明かされています。記事中で「PC-6001ではいろいろソフト作ってマイコン雑誌に投稿して、ときどき掲載されたりしたんですよ」と語る、横山英二さん。
ここでいう「マイコン雑誌」というのは、工学社の「月刊I/O」のことです。「I/OがT&E SOFTを育てた」と言っても過言ではありません。
「I/O」1982年5月号のコムパックの広告に「T&E SOFT」の名前があります。経営担当が兄の横山俊朗さん、開発担当が弟の横山英二さん。二人合わせて「T&E」です。コムパックは工学社グループのソフト流通の会社です。デービーソフトやテクノソフトやキャリーラボもコムパックで販売していました。
この翌月、「I/O」1982年6月号で「リアルゴルフゲーム」のプログラムリストが公開されています。記事中で横山英二さんが次のようにコメントしています。
今後、T&E SOFTではPC-6001の機能をフルに生かした制作ゲーム・ソフトを月に1~2本のペースでコムパックから発売していきますのでよろしくお願いします。
有言実行。T&E SOFTのゲームが続々と発売されます。これに連動して、「I/O」にプログラムリストが載り続けます。
・I/O 1982年6月号「リアルゴルフゲーム(PC-6001用)」
・I/O 1982年7月号「3-Dアステロイドファイヤー(PC-6001用)」
・I/O 1982年8月号「ミサイルファントム(PC-6001用)」
・I/O 1982年9月号「タワーパニック(PC-6001用)」
・I/O 1982年10月号「マリンシューター(PC-6001用)」
・I/O 1982年12月号「ピラミッド(PC-6001用)」
・I/O 1983年4月号「3-Dゴルフシミュレーション(FM-7用)」
、、、もう「ときどき掲載」というレベルじゃありません。市販のゲームが、雑誌でソースコードまで載せてしまっているのが興味深いです。捨て身の戦略でしょうか。
ゴルフゲームが2本もあります。このゴルフ好きがのちの「遙かなるオーガスタ(1989年)」「T&E ヴァーチャルゴルフ(1995年)」につながっている気がします。俊朗さん・英二さん、どちらの趣味なのか。
「I/O」 1983年1月号には表2(表紙の裏側)というお金がかかるページにT&E SOFTの広告を載せています。「ピラミッド」までの全作品に加えて、「T&Eスペシャル(CASIO FP-1100用)」というゲームが載っています。
さらに、「I/O」 1983年4月号(3月売り)のT&E SOFTの広告で「求人のお知らせ」を掲載。推測ですが、それまでは開発担当は横山英二さん一人だったんじゃないでしょうか。メンバーを集めて、この4か月後には「惑星メフィウス」を発売してしまうのが凄いところ。
T&E SOFTの勝負強さを感じます。
ついでに紹介。
T&E SOFTといえば、謎のキーワード「ハマチ」です。
ロボットを修理後、TALKモードで「ハマチ」と打ち込むと「ハマチトハ ブリ ノ ムスコデアル」という返事があります。意味はわかりません。
「スターアーサー伝説 惑星メフィウスはこうして作られた(1984年6月)」より。
ここで「はまちの生活」というフレーズがあります。意味不明ですが。
コメントしてるのが吉川泰生さんという方です。吉川さんはPlayStation用の超大作ゲーム「ソナタ(1999年)」の企画・プロデュースを担当していて、Windows版「ハイドライド1・2・3」の「ハイドライドミュージアム」にも登場します。T&E SOFTにおけるキーパーソンの一人だと思います。
この写真の右側に載っている「天才少年加藤くん」も「ハイドライドミュージアム」にも登場するキーパーソンです。
「ハイドライドII(1985年)」より。
農民と会話をすると、たまに「はまち!!」と答えます。
、、、やっぱり意味不明です。
「DAIVA(1987年)」のマニュアルの最終ページ。T&Eの社長、横山俊朗さんによる開発後記より。DAIVAの発売が遅れた経緯が書かれているのですが、詳しくは実物をご覧ください。
ここで「ハマチ状態」という発言がありますが、結局、何なのかわかりませんでした。
誰か意味を知っている人がいたら教えてください。
最後にオマケ的な情報。
この「暗黒星雲」ですが、メインプログラムはBASICで動いています。昔のゲームでは、よくあることでした。
TALKモードでCtrl+Cキーを押すと、プログラムが止まります。これはディスク版ですね。
そのまま「LIST」コマンドを実行すると、「Protected Program」と出ます。プログラムを見ることはできません。
しかし、「MON」命令と「POKE」命令をうまく使うと、LISTコマンドが有効になります。
こんな感じでBASICのプログラムを見ることができてしまいます。超難解コマンドもバレバレです。
これを読めば、プログラムの勉強になるかも。