プロジェクトEGGで無料で配信している「夢幻の心臓 for PC-8801/mkII」を遊んでみました(会費として月額550円が必要)。
「夢幻の心臓」の発売は1984年3月。1984年の中頃の国産RPGとしては「夢幻の心臓」の他に「ポイボス」「DUNGEON」「パラレルワールド」「ぱのらま島」「ザ・ブラックオニキス」がありました。ほぼ全ての作品に「ウルティマ」か「ウィザードリィ」の影響が見られます。「ドラゴンスレイヤー」と「ハイドライド」が登場するのはこのあとです。
この「夢幻の心臓」ですが、表示がありえないくらい「遅い」です。広告(ログイン1984年4月号/6月号)では「マシン語による超高速マルチタイリングペイントルーチンの使用!」と謳ってますが、、、。タイトル画面が出るだけで76秒ほどかかります。
戦闘シーン。あまり強く主張できませんが、ドラクエとの類似性を感じます。コマンド方式とか、死にそうになると色が変わるあたりは、ドラクエに影響を与えたのかもしれません。
やはり、遅いです。敵とエンカウントしたら、10秒くらい待たされます。戦闘が終わっても、街に入っても、街の中を移動しても10秒くらい待たされます。アドベンチャーゲームだったら我慢できるかもしれませんが、こんなに何度も待たされると、さすがにギブアップです。x倍速モードが欲しいです。
当初の評判はどのようなものだったのでしょうか?
ログイン1984年7月号では手厳しいレビューが載っています。「忍耐力発揮型RPG」「ディスクのロード回数がやたら多すぎる」「画面デザインが良くない」「表示エリアが狭すぎる」などなど。掲載した場所が真剣な批評をするというコーナーだったので、厳しくなるのは当然でしょうか。
評価が一変したのは、それから約8カ月後。
ログイン1985年3月号に「ロールプレイング特別ソフトレビュー」と題して、「夢幻の心臓」を改めて紹介。「夢幻の心臓 II」「ファンタジアン」の予告もセットになっています。
ログイン編集部は今、過去のあやまちに気付き、深く反省している。こんなにすばらしいロールプレイング・ゲームを「遅い」という理由で敬遠していたのだ。そう、初期バージョンのPC-8801版です。ところがPC-9801F版をプレイしてビックリ。ドヒャ~ッ!とたまげて、1週間も徹夜を続けちゃったィ!
どうやら98版は快適に遊べるらしいです。しかし、当時のPC-9801はビジネス機なので、遊ぶ人はかなり限られていたと思います。
ベーマガの場合、「夢幻の心臓」は1985年8月号に広告が載っただけで、紹介記事は掲載されませんでした。テープ版のある「リザード」の方が注目度が高かったかもしれません。
ブレイクしたのは、続編の「夢幻の心臓 II」からではないでしょうか(ベーマガ1986年3月号掲載)。「夢幻の心臓 II」は敵キャラが一瞬で表示されたり、全てが劇的に改善されています。
(2023/04/21追記)メニューで「グラフィック」の設定を変更すると、ペイントが禁止されて表示が速くなることに気が付きました。しかし、それ以外は遅いままです。
「チャレンジ!! パソコンAVG&RPG(1986年)」に「夢幻の心臓」と「夢幻の心臓 II」が小さく紹介されています。攻略の記事は掲載されませんでした。
「夢幻の心臓」のJX版はレアだと思います。JXは森進一が宣伝していたIBM製パソコンです。自分は大昔にJX版の「夢幻の心臓」を1回だけ遊んだことがありますが、移動中にエラーが出てしまって、点滅するカーソルを見て、「BASICで動いてたのか?!」と驚いたことがあります。
「夢幻の心臓」は人気シリーズとなり、第3作まで発売されました。辰巳出版の「パソコンゲーム80年代記(1990年5月発行)」という本で、藤岡千尋さんが「夢幻の心臓」をオススメしています。
社員がなんだか訳のわからないゲームを作った。おもしろかったが、売れるか不安なままリリース。結果的には、これがクリスタルの運命を決めた。
掲載した当時、藤岡さんはクリスタルソフトに在籍。この本が出た約5か月後にクリスタルソフトはT&E SOFTに吸収されました。この「社員」というのは開発者の富一成さんのことだと思います。富一成さんは「ボルフェスと5人の悪魔(1987年)」を作った後に退社したと本に書かれています。
「夢幻の心臓」は大部分がBASICで動いているので、Ctrl+Cを押すと、止まってしまいます。
これはfiles命令の実行結果です。DISK版N88-BASICですね。
このようにline命令などで遊ぶことができます。何らかの対策がされているのか、saveができませんでした。
以下、ゲームを止めてみるシリーズ。