以前、日経ソフトウエア9月号で書かせて頂いたM5StackCの記事を再録しています。
以前、日経ソフトウエア9月号で書かせて頂いたM5StackCの記事を再録しています。
プロジェクトEGGで配信中の「ソル・フィース(1990年)」を遊んでみました。X68000用のシューティングゲームです。
その昔、パソコンでアクションゲームを作ることはあまりに無謀な行為であり、技術的なチャレンジでした。見果てぬ夢ともいえます。しかし、X68000の登場で事態が一変。以後は、フラストレーションを爆発させたような、X68000専用ゲームがリリースされ続けました。そうした中の一作です。
本作の最大の特徴はあのBug太郎さんがプログラムを担当したということ。ベーマガ1991年1月号に「ベーマガの卒業生が作った」と紹介されたり、ベーマガ1993年4月号にクリエイターインタビューが載っているので、ご存知の人も多いと思います。
あと、「みんながコレで燃えた! NEC8ビットパソコン PC-8001・PC-6001 永久保存版(2005年)」にBug太郎さんのインタビュー記事が載っているので、参考になると思います。
ゲーム内容は説明不要だと思います。ボタン押しっぱなしで遊べます。一見すると、フレンドリーなゲームです。
しかし、実際はとてつもなくプレイヤーに厳しいです。
たとえば、上の写真は2面に登場するキャラクターですが、当たり前のように「撃ち返し弾」を発射してきます。もう「グラディウス」の2周目のような難易度です。
この敵、画面左側で果てしなく居残り続けます。画面右側に居る時に倒さないと詰む仕掛けです。
敵と弾がダイナミックすぎです。調整をミスってるんじゃないかと思うくらい。全てが倍速で動いているように感じます。
この作品、多関節とか、回転表示とか、巨大キャラとか技術的な見どころが一杯あります。謎技術の領域ですね。X68000の限界を超えてるような場面もあります。X68000には回転機能も拡大機能もありませんので、自前の技術でソフト的に実現しないといけません。
3面はこんな感じ。どんどん凶悪になっていきます。赤い背景に赤い爆風。これに当たると死にます。
4面も凶悪ですが、コンティニューを繰り返すとどうにかクリアできました。
5面。ここから先はお手上げです。
高速スクロールで障害物をかいくぐっていく中で、レーザーと弾が降り注いで、さらに背後から敵が追い打ちしてきます。掟破りすぎる。イメージファイトみたく、自機は噴射で反撃できるらしいのですが、そういう重要な機能は説明書に書いて欲しかった。
いろいろ文句言いながらも5面ボスまで来ました。攻撃を避けるのに忙しすぎる。
前々回に「グラディウス2が難しすぎ」と書いてしまいましたが、こっちがさらに上です。ステートセーブに非対応なのがツライ。無限にコンティニューできるのが良心的ですが、心が折れます。
恐ろしいことにこれが難易度ノーマル。イージーはありません。ここからさらに上の難易度が存在します。
ついでに紹介しておくと、2面に登場する中ボス。
意味はわかりませんが、側面に小さく「TRZZ」と書かれています。
同じような文字が「FULL-FIRE」の1面のボスにも書かれてます。
これが掲載されたのがベーマガ10月号(9月売り)なので、「ソル・フィース」よりも2か月ほど先です。並行して作っていたのでしょうか。恐るべき創造性です。
上の画面は「みんながコレで燃えた! ~」収録のバージョンです。エンディングのメッセージがオリジナルと違います。
ベーマガのイベントではFM音源対応の「FULL-FIRE」を公開して、会場を驚かせました。
「ソル・フィース」から脱線しますが、ついでにBug太郎さんの投稿作品「GIVERS」を紹介しておきます。プチコン4のPC-8001エミュレータで動かした画面がこちらです。プログラムはベーマガ片手に頑張って入力しました。
この時点でもう多関節の表現を取り入れてるのが、さすが。
「GIVERS」は作者ご本人の手によって大幅にアレンジされて、「GIVERS P3D」としてプチコン4版が公開されています。アングルが替わったり、デモシーンがあったり、非常に手が込んでます。これをタダで遊んでいいのかという気になります。
当然のようにポリゴンが動いてますけど、「プチコン4」にそんな機能はありません。3Dのツールも公開されているので、スキルがある人は応用できるのかもしれません。
Bug太郎さんは過去にベーマガで「Bug太郎のプログラム・タイム」という連載を書かれていたのですが、その4回目のテーマが「三次元グラフィックス」でした。この技術が「GIVERS P3D」に活かされているような気がします。気のせいかもしれませんが。
これが掲載されたタイミングが、メガドライブ用の「エクスランザー」の発売の約2ヶ月前です。Bug太郎さんは「エクスランザー」では3Dプログラムを担当しています。
(どんどん「ソル・フィース」から脱線しますが、)
友人が勝手に送ったという「SPACE 'N' HARRIER(1987年8月号)」を経て、1987年10月号に「DRAGON 'N' SPIRIT」が掲載されました。元ネタであるドラスピがベーマガの表紙を飾ってから、わずか3か月後。Bug太郎伝説の始まりです。
現在、「DRAGON 'N' SPIRIT」はプロジェクトEGGで配信中です。会員ならタダで遊べます。こういうパロディ的なのが許されるのは凄いこと。この作品は、メインルーチンをBASIC で処理しているのでかなり重たいです。
この後、「N-TYPE」が1988年4月号に掲載されます。前作よりもマシン語の比率を増量。劇的に技術力がアップしているのが凄いところ。「N-TYPE」はページに誤植があって、追加のプログラムが1988年5月号に載っているので注意しましょう。
2回目のベーマガイベントではオールマシン語による「N-TYPE II」が公開されました。
「DRAGON 'N' SPIRIT」の起動直後にスクリーンショットを撮ろうとしたら、処理が止まってしまいました。原因はよくわかりません。
「OK」と表示された状態で、カーソルキーが点滅しています。
ここで「list」と打ち込んでみたら、プログラムリストが表示されました。当たり前ですが、Bug太郎さんのお名前があります。PC−8001に触ったような気分を味わえて、得した気分になりました。
プロジェクトEGGで配信中の「ガンマー5 for PC-8801(1986年)」を遊んでみました。
ガンマー5はプレイヤーがパワードスーツで戦うというアクションゲームです。単色のプレーンを使って、なめらかな縦方向スクロールを実現しています。この凄さは今だと伝えるのが難しいです。
こちらがベーマガ初登場時の広告です。販売はマイコンソフト。エリア数31とか、6種類の武器とか、キャラクター100種類とか、究極のアクションアドベンチャーとか、壮大なフレーズが並んでいます。地球に衝突しようとしている彗星ミサイルを破壊するというストーリーのようです。
スーパーゼノンと銘打たれている通り、本作は「空間浮遊都市ゼノン(1984年)」の続編です。
当時のベーマガにはナムコ、ジャレコ、アイレムの作品に混ざってゼノンが掲載されていました。全部、マイコンソフトの販売です。
ベーマガでは長きに渡って画面写真が掲載されていたので、覚えている人も多いのではないでしょうか。
ちなみに、ゼノンは元々、電波新聞社主催の「第一回マイコンソフトウェアコンテスト」の応募作品でした。上記の写真ではまだ予選の段階ですが、この後、第一位を受賞します。
ゼノンもガンマー5も「ゼビウス(1983年)」の影響が見られます。当時のパソコンユーザー&ゲームプログラマは「パソコンでゼビウスを遊びたい」という夢に取り憑かれていました。この飢えと渇きは切実なものだったのですが、今だとピンとこないかと思います。パソコンがアーケードゲームのスペックに追い付くにはX68000が登場するまで待たないといけません。
作者の呉英二さんについては7年前に公開されたOBS LIVEが参考になります。
https://www.youtube.com/watch?v=COZJOch6Nrk
呉さんは元教師という異色のキャリア。大学時代は落語研究会。月刊マイコンで長年連載。マイコンソフトブランドで作った「ぽんこつ船サバイバル」「ジャングルショック」。「ゼノン」はハンドアセンブルで開発。移植を手掛けた「PC-8801版ギャラクシアン」「X1版ブラックオニキス」。いち早く3Dアクションを採用した「超次元戦士エプシロン3」。そして、呉ソフトウエア工房を立ち上げて「アルゴー」「シルバーゴースト」「ファーストクイーン」を作った、など面白いエピソードが語られています。
この「ガンマー5」、最初は遊ぶのに難ありでした。
とりあえず遊ぶことはできますが、あっという間にゲームオーバーになります。スクロール速すぎです。弾の連射は不可能。
主にプロジェクトEGGの問題ですが、、、説明書がありません。操作方法はEGGランチャーから「README」ボタンを押して確認します。画面のパラメーターの意味がわかりません。そして、出てくるキャラクターが抽象的でよくわかりません。
というわけで、早くも詰んでしまったのですが、試行錯誤を繰り返して、なんとか遊び方が見えてきました。呉英二さんが書かれた「PC-8801mkIISR/FR/MR活用研究」(石田和久さんと共著)の「GAMMA5コンストラクションゲーム」のページが参考になりました。これを読むと全部のキャラクターに名前が付いている事がわかります。
画面のパラメーターは、こんな意味だと思います。
・CB:クロスビーム残弾数
・TB:ツインビーム残弾数
・SB:ソニックビーム残弾数
・MI:ミサイル残弾数
・SL:ソーラーボール残弾数
・BARRYER:バリア残量
・BST.FUEL:エネルギー残量
そして、キーのアサインは、こんな感じだと思います。
・[C]or[space]:レーザービーム。無制限で撃てる。
・[Z]:ツインビーム。TBが減る。V字攻撃。
・[X]:クロスビーム。CBが減る。十字攻撃。
・[X]+[C]:ソニックビーム。SBが減る。障害物を透過する。
・[Z]+[X]:ミサイル。MIが減る。格子ドアやバンデタワー(電撃を出す敵)を破壊可能。
・[Z]+[X]+[C]:ソーラーボール。SLが減る。ほとんどのものを破壊可能。
・[shift]:自機が倍速で移動。ブースターのエネルギーが減る。
、、、まさかの同時押し。
高速スクロールで的確にキーを押さないと死ぬという、そういうゲームです。もう、音ゲーみたいなものなので、操作性がどうこう言うレベルではありません。
シフトで移動速度が速くなるというのは、かなり重要だと思います。
ゲームパッドの対応が不完全です。ゲームパッドの場合、Aボタンがレーザー、Bボタンがツインビーム(V字攻撃)。最低でも3ボタン必要なのに2ボタンしか割り当てられていません。ボタンのカスタマイズもできません。なので、キーボードで遊ぶしかないという状態です。
アイテムはこんな感じです。
他にもゲートを開けて入ったり、エリア間が複雑につながっていたり、このゲーム特有の仕掛けがあります。難易度が異様に高いぶん、攻略のしがいがあると思います。
呉ソフトウエア工房はこちら。ファーストクイーンの最新作を販売しています。
プロジェクトEGGで配信中の「グラディウス2 for MSX(1987年)」を遊んでみました。中古で8000円くらいするプレミアソフトですが、これは550円で遊べます。
アーケードの「グラディウスII(1988年)」とは別物です。本作を「グラディウス2(に)」と呼ぶとかWikipediaに書いてありますけど、一度も聞いたことないので、何かの間違いでは。
この作品、見た目が好みじゃないせいで、ずっと敬遠してましたが、これはこれで面白い。MSXでここまで作り込んだことが凄いなと。
新ステージとか、新パワーアップとか、SCC搭載とか、チャレンジ精神に溢れてます。「グラディウスリバース」の元ネタがあちこちに出てきます。説明書の序文から察するに、最初は「沙羅曼蛇」を移植しようと思っていたんでしょうか。
特に感心したのが、この落ちる床。
背景が8ピクセル単位でガコガコ動きます。これはハードの問題なのでどうにもならないですが。
それにしても難しすぎです。意地の悪い仕掛けも多い。
全体的にフレームレート足りなくて、たまにスプライトが消えるので(それは再現しなくてもいい)、なんだかよくわからないうちに死んでることがあります。
ステージ6。敵が後ろから来て、上下からも来て、前からも来るので、どうにも進めないです。
以前、「敵が頑丈であること」と「視認性が悪いこと」がクソゲーの二か条だと書きましたが、この場面はまさにそれ。
ステージ7。障害物を破壊しながら進む。斬新すぎる要塞ステージ。
初見殺しにもほどがある。
どうにかこうにか、最後のボスに到着。最後じゃないけど。
このステージが折り返し点で、最終的には14ステージまであります。
攻撃がむちゃくちゃすぎ。死んだら巻き戻しなので、ストレスになります。これを許した時代があったのか、、、という感想です。
デモに表示されるストーリー。
個人の感想ですが、この中学二年生なノリにはついていけません。グラディウス2はその昔、一般からストーリーを募集したことがあって、実際に中学生のが採用されたのかと思っていましたが、そんなことはありません。
「グラディウス2」の作品募集の記事はベーマガ1987年7〜8月号のコナミ工業(現コナミ)の広告に載っていました。「グラディウス・フェア」というキャンペーンの一環です。応募の期間は1987年6月15日〜7月31日まででした。
募集内容は以下の4部門。
「ゲームアイデア部門」
「ストーリー・シナリオ部門」
「イラスト・モデル部門」
「ジオラマ部門」
そして、締切から22日後、1987年8月22日に「グラディウス2」が発売しています。
20日程度で、カートリッジの製造・販売までこぎつけるのは時間的に無理。作品の審査も考えたら、もっと無理です。なので、応募のネタはゲーム内には入っていないはずです。広告にも「応募作品を採用する」とはどこにも書いていませんでした。
翌年(1988年)にはアーケードで「グラディウスII」が発売されているので、応募のネタがそっちに入っている可能性がありますが、確かめる方法がありません。
ベーマガ1987年11月号の306ページ目(企業ページ)に、受賞者4名のフルネームと写真(大賞の方の顔だけ)が小さく発表されています。
これによると、受賞の発表会が1987年9月5日に開催済みです。締切から1か月くらいで、審査と受賞者へのコンタクトを終わらせたということになります。
受賞者の部門は以下の4つ。
「グラディウス2大賞」
「ジオラマ部門優秀賞」
「アイデア部門優秀賞」
「イラスト部門優秀賞」
、、、ストーリー・シナリオ部門が見当たらないのですが、大賞がそれでしょうか?
この記事、応募の総数とか、応募作品の内容とか、重要な情報は書かれていません。ネタの宝庫なので、発表しにくいと思いますが。
(2021/10/22追記。雑誌「MSX・FAN」の1987年11月号に小さく作品が載ってました。)
名前が載っているので、ググったら、大賞を受賞したご本人がヒットしました。5年前のブログですね。
驚きの情報がいくつか書かれています。
名前入りカートリッジについては広告に一行だけ書かれていましたが、実在していることに驚きました。UVEPROMを使っているのでしょうか。
野倉さんは2回目のコンテストでも最優秀賞(イラスト部門)を受賞してます。名前入りアーケード基板は存在そのものを知らなかった。
コナミの入社試験に「特別枠」があったというのが興味深い。コンテストには人材発掘の目的もあったのかも。
ここで書かれている「2回目のコンテスト」というのは、コナミ主催の「グラディウスIII アイデア公募」です。雑誌「ゲーメスト」の1989年1月号(No.28)~2月号(No.29)にコンテストの募集記事が載っています。記事によると、応募作品の著作権はコナミにタダで譲渡するとのこと。いまこれをやったら、利益の分配でモメるんじゃないかと思います。
応募の締切は1989年1月31日まででした。1000通以上の応募が集まり、締切から約5か月後、審査の結果がゲーメスト1989年8月号(No.35)で発表されました。
授賞式の様子はゲーメスト1989年11月号(No.38)に載っています。「グラディウスIII」は1989年12月に発売。応募のアイデアが実際に製品に組み込まれたのかどうかが気になります。