だから いま マイコン(1981年)

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「だから いま マイコン(1981年)」

だから いま マイコン」を読みました。送料込みで古本が801円。発行はマイコン(パソコン)とは縁のなさそうな集英社

本書の著者は東大マイコンクラブの学生6名(イラスト担当を含めると7名)です。学生だけでマイコンの本を一冊書くというのが不思議ですが、マイコンは超最先端の技術だったので、書ける人が限られていたのだと思います。企画を進めるのに東大のブランドは有利だったのではないでしょうか。

これは活字の本で、漫画ではありません。アラレちゃんは表紙だけ。イラストや写真は豊富です。漫画的な内容を期待すると肩透かしを食らいます。

あとがきによると仲間内で僕らのアイドルはアラレちゃんだという話が起きて、鳥山明さんに依頼したと書かれています。が、不自然なので、低年齢層にアピールするため、集英社側が提案したんだと思います。

どことなく「こんにちはマイコン(1982年)」を連想します。

 

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奥付け

発行は1981年10月。「こんにちはマイコン」が出る、およそ1年前です。

 

本の内容は、以下の通り。

マイコンの基礎的な知識。F-16フライトシミュレーターの画面がカラーで載ってます。

・東大マイコンクラブについて。部員は40名。「平安京エイリアン」を作った「TSG」はライバル的な存在。

・自作のゲームについて簡単に紹介。「万引少年」「万引少女」「サテライトコマンド」「ブラックホール」。

・BASIC言語のコマンド紹介。

・各社のマイコンや雑誌(I/OやASCII、RAM、マイコン)の紹介。

秋葉原のお店紹介。秋月電子通商が登場。

太田裕美さん。

など。当時としては貴重な情報源だったんじゃないでしょうか。

 

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AX-4 ブラックホール。杉本薫(阿久津達也)さん作。

ゲーム紹介はあっさりで、画面写真が載っているのは「万引少年」だけです。

「サテライトコマンド」がなんだかわからない。

ブラックホール」はAX-4のものと同じでしょうか?

 

あと、本の中で何度か太田裕美さんという歌手の顔写真や名前が出てくるのですが、ファンだからという理由で無理やり出してますね。

「みんながコレで燃えた(略)」のインタビューによると、集英社の雑誌「週刊プレイボーイ」が太田裕美さんを連れてマイコンクラブを取材する企画があって、ここで、部員の方々はリアルで会うことができたそうです。執筆陣の若さを感じます。

 

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シルフィード」のサウンドテストモード。

そして、太田裕美さんが好きすぎて、三橋正邦さんの作者名が「大葉浩美」となります。この傾倒ぶりが「シルフィード」の名曲を生んだと思うと興味深いです。「みんながコレで燃えた(略)」で大葉浩美を女性だと思ってる人がいると書かれていますが、AXのデモでメッセージにハートマーク使っているので、勘違いするのも当然か。

 

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月刊RAM1980年2月号

国会図書館で複写した「月刊RAM」1980年2月号の表紙です(実物はカラー)。

PET2001用「万引少年」が掲載されています。筆者は東大マイコンクラブ(ゲーム開発事業部)鈴木浩さん。

「万引少年」は1979年の駒場祭で大人気。

翌年、1980年の駒場祭ではバージョンアップした「万引少女」というゲームを公開したそうですが、どのような画面かわかりません。合成音声に対応したとあるのですが、PC-6001は発売していないので、どうやって実現したのか気になるところ。

 

AXシリーズの実名と記載名については、morさんという方の「OLION UNTIMANIA」というサイトに情報がありました。

 

www4.airnet.ne.jp

 

作者のインタビューまで載っています。「みんながコレで燃えた(略)」より内容が充実しています。

これを読んで知りましたが、「万引少年」を作った鈴木さんは第一回I/Oプログラム・コンテストで最優秀賞を受賞した「ザ・コックピット(月刊I/O 1984年4月号)」の作者さんだそうです。フライトシミュレーターは「だから いま マイコン」にも登場しているので、そこから3年以上かけて洗練したものを応募したということになります。

 

確認したところ、「だから いま マイコン」の著者6人のうち、AXシリーズの開発に関係しているのは4人ですね。私が見落としている可能性がありますが。この中でゲームアーツに関係しているのは1人だけでした。このへんの情報をハッキリさせたかった。

「みんながコレで燃えた(略)」に登場するAXシリーズ関係者の現在を見ると、大手電機メーカー勤務とか、公共事業を指揮する公務員とか、朝日ネットの重役とか、恐ろしく手堅いお仕事をされてますね。さすが東大。ゲームから手を引くのが当然と感じます。

 

最後に「みんながコレで燃えた(略)」に収録されているゲーム画面を一部紹介します。

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AX-5 オリオン。竹内あきら(滝口彰)さん作。

 

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ちなみに「エポック(1981年)」の作者、LARRY MILLERさんの名前が出ます。

 

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AX-2 デュアルエイリアン。杉本薫(阿久津達也)さん作。

 

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AX-2 インザウッズ。藤澤健(藤沢謙二)さん作。

 

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AX-5 クエスト。大葉浩美(三橋正邦)さん作。

 

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AX-1~4 デモ。大葉浩美(三橋正邦)さん作。

(2021/11/11追記)

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AX-2 宇宙輸送船ノストロモ。大葉浩美(三橋正邦)さん作。

これは大好きでよく遊んでました。緊張感が素晴らしいですね。壁を叩く音を聞くと、「白子のりください」っていう当時のTVCMを思い出すのですが、今だと誰にも通じない。

先の「OLION UNTIMANIA」のインタビューによると、元々は滝口さんがPET2001用に作ったものと発言されています。

 

 

「ゼリアード for PC-8801」(ネタバレ)

プロジェクトEGGで配信している「ゼリアード for PC-8801(1987年)」を遊んでみました。正確にはPC-8801mkIISR用です。

作ったのは「テグザー」や「シルフィード」で有名な、あのゲームアーツ。カリスマを持つソフトハウスでした。

 

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ゼリアード

「ゼリアード」はアクションRPGメトロイドヴァニアと言ってもいいと思います。

画面は「ドラゴンバスター(1985年)」を連想しますが、内容的には「リンクの冒険(1987年)」が近いでしょうか。「イースIII(1989年)」が登場するのは、ずっとあとです。

今の感覚だと、フレームレートが足りなくて、動きがガクガクだと感じるかもしれませんが、当時としては最上級のクオリティです。アニメーションも豊富です。容量と処理の負担を減らすため、色数を削ったり画面サイズを小さくしたり、試行錯誤の跡がうかがえます。町の背景の重ね合わせ表示が技術的な注目ポイントです。

自分は「ゼリアード」をマイナー作品だと思っていたですが、実際は世界的に有名でした。DOS版を約26分でクリアするという動画がYouTube に上がっています。DOS版パッケージの改悪ぶりは、いかにも海外ゲームという感じ。死んだらお金がなくなりますが、銀行に預けておくと大丈夫っていう仕組みは「ホロウナイト」に受け継がれている気がします。

以下、内容のネタバレを含みます。エンディング画面も出てくるのでご注意ください。

 

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1体目のボス

ダイジェストで内容を紹介します。最初に戦うボスが洞窟界の巨大ガニ。これは下敷きにならないようすれば勝てます。

 

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2体目のボス

続いて、鍾乳洞界の巨大ダコ。スミをジャンプでかわして攻撃すると倒せます。

このへんまでは楽しく遊べます。あとは意地悪な仕掛けの連続で、ストレス度が青天井に上がっていきます。

 

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3体目のボス

樹木の世界のボス、巨大ニワトリ。ボスまで行くには「勇者の紋章」というアイテムが必要です。隠し場所は攻略の動画を知りましたが、そんなのわかるか!と逆ギレ。

ボスの攻撃パターンは突進か羽ミサイルかの2種類。突進を回避するタイミングがシビアすぎです。結局、石を使って倒しました。

 

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動く足場と滑る床

ゼリアード名物の「動く足場」。この足場をクリアまでに200~300回ほど乗り降りします。落ちたら最初からやり直し。もしくは死亡。これを延々と繰り返すので、心をベキベキに折られます。

氷の世界は地面が滑るので難易度倍増です。「ルゼリアの靴」を入手すると滑らないようになります。隠し場所が意地悪。

 

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4体目のボス

氷の世界のボス。しゃがんで剣を振っていれば勝てます。

 

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5体目のボス

腐った世界のボス。バラデューク的な不気味さ。この敵は「勇者の剣」じゃないと、上空での攻撃が当たりません。武器屋まで紋章を持って行って、剣をもらう必要があります。

ボスを倒すと、黄金の世界に移りますが、ドアに鍵がかかっていて、街に入れない。鍵を入手して、やっと入れたと思ったら、換金率が悪い。しかたないので、2つ前の銀行まで戻らないといけない。

 

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足場が見えない

掟破りの難所。足場が見えないので、足場の動きを予想して飛び降ります。ステートセーブでズルしました。

 

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6体目のボス

黄金の世界のボス。

ボスは球を転がしてくるので、ジャンプでかわして、足を攻撃します。ここに来るまでに「シルカーノの靴」を入手して、斜面を登れるようにします。靴の着脱が面倒です。

ボスを倒すと、炎の世界に移りますが、町でマントを買わないと体力をどんどん削られます。

 

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7体目のボス

本作、最大の難所。炎の世界のボス、ドラゴンです。

炎を浴びせられて、2秒くらいでゲームオーバーになります。時間的にも空間的にも余裕がなさすぎる。

結局、「明光の剣」と石とサブルリング、薬を3個、という装備で倒しました。明光の剣は34800ゴールドなので、5800アルマス。10アルマスを持つザコを580回ほど倒さないと買えません

 

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壁抜けのトリック

最終ステージ。

そんなのアリ!?と思うような無茶苦茶なトリックが5~6カ所あります。果たして、これをノーヒントで解決できるのか。

 

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8体目のボス

ラスボス一歩前のボス。ヒットしてるのか、ヒットしてないのかよくわからない状態で地道に剣を振ります。ちょっとの接触でプレイヤー側は大ダメージ。最強の盾は値段が高くて買えなかった。

ここで薬を残しておかないと、次のラスボス戦で詰みます。

 

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ラスボスとの対決

最後の敵。それほど強くないのですが、終盤はプレイヤーから逃げながら体力を回復します。ラスボスにあるまじきズルさ。死ぬ時にラスボスっぽいセリフを吐かずに黙って消えます。

 

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棒読みのお姫様

ラスボスを倒すと、お姫様が復活して喋ります。エンディングの曲は名曲ですね。

本作から感じたのは、アクション性の高さ、ビジュアルとサウンドの素晴らしさ、圧倒的な物量、そして、異常すぎる難易度です。プレイ中は死んで死んで死にまくって、本当にクリアできるのか?と思ってしまいました。「イース(1987年)」が謳った「優しさの時代」とは方向性が全く逆です。

密度と物量が他社と桁違いです。他のソフトハウスだったら分割して「ゼリアード1」「ゼリアード2」で売ると思います。これで採算が取れたのでしょうか。ゲームアーツ=超大作のイメージが強固なものになりました。

あまりに難しいので、動画でカンニングしましたが、それでも難しい。自分は遠い昔にX1turbo版を解いていますが、一体どうやって解いたのか。発売当時は雑誌の攻略記事が賑わっていたし、ゲームアーツに600円ぶんの切手を送ると、ヒントブックがもらえました。昔はアドベンチャーゲームで半年くらい悩んだりしたので、それくらい時間を費やすのが正しい遊び方かもしれません。驚くほどプレイヤーに優しくないんですが、昔のパソコンゲームってのはこういう世界です。

 

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宮路武さんと五代響さんの名前が

ゼリアードのスタッフクレジット。

サブプログラマーの中に宮路武さんと五代響(池田公平)さんのお名前があります。

実は今回プレイしたのは、このお名前を見るためでした。

 

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参考資料

手元にあるアスキーの蘇るシリーズを読み直してみました。以下は本の内容を切り貼りしただけなので、詳しい情報は本の実物をご覧ください。

蘇るPC-8801伝説 永久保存版(2006年)」に「ゲームアーツOBに直撃! 当時の秘話をお蔵出し! ゲームアーツ徹底研究」と題して、宮路さん兄弟と池田さんのインタビュー記事が8ページほど載っています。

同じくゲームアーツOBの大葉浩美(三橋正邦)さんと上坂哲さんは「みんながコレで燃えた! NEC8ビットパソコンPC-8001PC-6001永久保存版(2005年)」に登場します。

 

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シルフィード(1986年)」

パソコンゲーム界に衝撃を与えた「シルフィード」です。インタビューによると、「シルフィード」はプロトタイプまで含めて開発に3年を費やしたとのこと。ハードの陳腐化が激しい当時としては常識外れなことですが、ここまで作り込むのがゲームアーツらしさだと感じます。

上記のインタビューの最後の1ページは宮路洋一さんのインタビューです。掲載当時(2006年)、兄・洋一さんはゲームアーツの社長で、弟・武さんはジー・モードの社長でした。

セガサターンが現役の時代、ゲームがどんどん超大作化する中で、お金と人を集める方法が大きな問題となっていました。洋一さんの答えはESP(エンターテインメント・ソフトウェア・パブリッシング)を組織すること。ESPは長く続きませんでした。2000年を境にゲームアーツ=超大作の図式が崩れていったと思います。武さんは超大作を否定し、モバイルゲームの世界に進みました。

 

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「HARAKIRI」(プロジェクトEGGで配信中)

上記のインタビューでは宮路武さんは自身が手がけた「HARAKIRI」を気に入っていて「誰かもう少し洗練したニューバージョンを出してくれないかな」と発言しています。これが掲載された5年後(2011年)に宮路武さんはお亡くなりになっています。それからさらに6年後(2017年)、BEEPのイベントで池田公平さんが「HARAKIRI」の最新作を予告しています。

TECHNICAL ARTS | コンピュータソフトウェアの開発・販売 | プロダクト

 

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アスキー出版のAXシリーズ

1982年当時、アスキー出版は「AX」や「SX」と題したPC-6001用のソフトを発売しました。媒体は当然ながらカセットテープ。ソフトは東大マイコンクラブなどの面々が泊まり込みで開発しました。

同シリーズのソフトは書店で流通したり、NECが大量に買い取ることで、広く普及しました。ASCII別冊「PC6000 NOTE」の掲載作品「スターコマンドΣ」はテープ版も発売されました。「みんながコレで燃えた(略)」によると、これら一連の企画はアスキー第二出版部部長だった松田充弘さんによるものだそうです。のちに松田充弘さんはゲームアーツの社長になります(さらに会長に就任)。ゼリアードのエンディングにはプロデューサーの「Mitsuhiro Mazda」と表記されています。ちなみにX1turbo版ゼリアードは隠し機能で「ゲームのコピーをやめましょう」という主旨の松田さんのメッセージが表示されます。

 

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AX -5収録の「クエスト(1982年)」

AX-5収録の「エス」。ぬるぬる動く3D迷路が衝撃でした。「Hiromi」というのが大葉浩美(三橋正邦)さんのこと。読みにくいですが、松田充弘さんのお名前も確認できます。

三橋さんはのちに「シルフィード」の合成音声プログラム(ザカリテの声も)を担当しています。この合成音声の機能はゼリアードでも使っているんじゃないでしょうか。

シルフィード」のオープニング曲はもの凄い名曲だと思うのですが、これも三橋さんの作曲によるものです。凄まじい活躍ぶり。

 

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AX-7収録の「ポリス&ギャング(1982年)」

AX-7の「ポリス&ギャング」と「ゴッドハリケーン」を池田さんが作られていて、「ザ・アステロディアン」を宮路武さんが作られています。先のインタビューの両名です。「ポリス&ギャング」と「ゴッドハリケーン」は「みんながコレで燃えた(略)」に収録されています。

 

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「SX-2 ドイツアフリカ装甲軍団(1982年)」

「SX-2 ドイツアフリカ装甲軍団」というシミュレーションゲームです。宮路武さんがゲームデザイン、宮路洋一さんがプログラムを担当しています。この時代においての超大作です。「HARAKIRI」のルーツもこれだと思います。「みんながコレで燃えた(略)」の収録バージョンは著作権料の配慮でリリー・マルレーンが鳴りません。

この作品は説明書が約30ページに及んでいて、最後のページに「ヒストリカルリサーチ」という肩書きでゲームアーツの内田敏幸さんのお名前があります。Wii用の大乱闘スマッシュブラザーズX(2008年)」は主にゲームアーツが開発していて、スタッフクレジットには内田敏幸さんと宮路洋一さんのお名前があります。スマブラXは約700人のスタッフが名を連ねています。現代の超大作です。

 

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テセウス(1984年)」

テグザー」の元ネタの一つ、アスキーの「テセウス1984年)」。作者は三橋正邦(大葉浩美)さん、滝口彰(竹内あきら)さん、h.godai(五代響=池田公平)さん、コミネマオさんの計4名です。

テセウス」はピクセル単位で全方向スクロールするというMSXでは不可能な離れ業をやってのけているのですが、その動作原理を「MSX Magazine永久保存版」で三橋さんが解説しています。

 

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「GAME BASIC for SEGASATURN(1998年)」に収録のテセウス

セガサターン用のプログラミング環境「GAME BASIC for SEGASATURN(1998年)」にサンプルとして「テセウス」が収録されています。作者はオリジナルの「テセウス」を手掛けた三橋正邦さんです。

でべろマガジン Vol.1(1996年)」「Vol.2(1997年)」によると、このサターン用BASICはESPと徳間書店インターメディアから「BASIC for SEGA SATURN」という名前で1997年3月に発売予定でした。初期のプロデューサーは宮路洋一さんでした。理由は不明ですが、一年以上遅れて、微妙に名前を変えた状態でアスキーから発売されました。

 

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GAME BASICでゲームアーツの名曲が聞ける

GAME BASIC for SEGASATURN」に収録されているサンプルの一つがこのゲームアーツ名曲集です。「ゼリアード」の曲もしっかり収録されています

長々と書きましたが、これでゲームアーツの出発点がアスキーであることと、ゲームアーツのコンテンツがアスキーから発売されたということを確認できました。お互いの絆の深さがうかがえます。

 

ゲームアーツ関連

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ソル・フィース for X68000の話

プロジェクトEGGで配信中の「ソル・フィース(1990年)」を遊んでみました。X68000用のシューティングゲームです。

その昔、パソコンでアクションゲームを作ることはあまりに無謀な行為であり、技術的なチャレンジでした。見果てぬ夢ともいえます。しかし、X68000の登場で事態が一変。以後は、フラストレーションを爆発させたような、X68000専用ゲームがリリースされ続けました。そうした中の一作です。

本作の最大の特徴はあのBug太郎さんがプログラムを担当したということ。ベーマガ1991年1月号に「ベーマガの卒業生が作った」と紹介されたり、ベーマガ1993年4月号にクリエイターインタビューが載っているので、ご存知の人も多いと思います。

あと、「みんながコレで燃えた! NEC8ビットパソコン PC-8001PC-6001 永久保存版(2005年)」にBug太郎さんのインタビュー記事が載っているので、参考になると思います。

 

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この敵が凶悪

ゲーム内容は説明不要だと思います。ボタン押しっぱなしで遊べます。一見すると、フレンドリーなゲームです。

しかし、実際はとてつもなくプレイヤーに厳しいです。

たとえば、上の写真は2面に登場するキャラクターですが、当たり前のように「撃ち返し弾」を発射してきます。もう「グラディウス」の2周目のような難易度です。

 

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よくわからないうちに死亡

この敵、画面左側で果てしなく居残り続けます。画面右側に居る時に倒さないと詰む仕掛けです。

敵と弾がダイナミックすぎです。調整をミスってるんじゃないかと思うくらい。全てが倍速で動いているように感じます。

この作品、多関節とか、回転表示とか、巨大キャラとか技術的な見どころが一杯あります。謎技術の領域ですね。X68000の限界を超えてるような場面もあります。X68000には回転機能も拡大機能もありませんので、自前の技術でソフト的に実現しないといけません。

 

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当たったら死ぬ爆風

3面はこんな感じ。どんどん凶悪になっていきます。赤い背景に赤い爆風。これに当たると死にます。

4面も凶悪ですが、コンティニューを繰り返すとどうにかクリアできました。

 

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この敵、凶悪すぎる

5面。ここから先はお手上げです。

高速スクロールで障害物をかいくぐっていく中で、レーザーと弾が降り注いで、さらに背後から敵が追い打ちしてきます。掟破りすぎる。イメージファイトみたく、自機は噴射で反撃できるらしいのですが、そういう重要な機能は説明書に書いて欲しかった。

 

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個人的に、ここが限界

いろいろ文句言いながらも5面ボスまで来ました。攻撃を避けるのに忙しすぎる。

前々回に「グラディウス2が難しすぎ」と書いてしまいましたが、こっちがさらに上です。ステートセーブに非対応なのがツライ。無限にコンティニューできるのが良心的ですが、心が折れます。

恐ろしいことにこれが難易度ノーマル。イージーはありません。ここからさらに上の難易度が存在します。

 

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2面の中ボス。側面の文字に注目

ついでに紹介しておくと、2面に登場する中ボス。

意味はわかりませんが、側面に小さく「TRZZ」と書かれています。

 

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「FULL-FIRE」。ベーマガ1990年10月号が初出。

同じような文字が「FULL-FIRE」の1面のボスにも書かれてます。

これが掲載されたのがベーマガ10月号(9月売り)なので、「ソル・フィース」よりも2か月ほど先です。並行して作っていたのでしょうか。恐るべき創造性です。

上の画面は「みんながコレで燃えた! ~」収録のバージョンです。エンディングのメッセージがオリジナルと違います。

ベーマガのイベントではFM音源対応の「FULL-FIRE」を公開して、会場を驚かせました。

 

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「GIVERS」。ベーマガ1989年3月号より。

「ソル・フィース」から脱線しますが、ついでにBug太郎さんの投稿作品「GIVERS」を紹介しておきます。プチコン4のPC-8001エミュレータで動かした画面がこちらです。プログラムはベーマガ片手に頑張って入力しました。

この時点でもう多関節の表現を取り入れてるのが、さすが。

 

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「GIVERS P3D」。プチコン4で配信中

「GIVERS」は作者ご本人の手によって大幅にアレンジされて、「GIVERS P3D」としてプチコン4版が公開されています。アングルが替わったり、デモシーンがあったり、非常に手が込んでます。これをタダで遊んでいいのかという気になります。

当然のようにポリゴンが動いてますけど、「プチコン4」にそんな機能はありません。3Dのツールも公開されているので、スキルがある人は応用できるのかもしれません。

 

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「Bug太郎のプログラム・タイム」。ベーマガ1993年4月号より

Bug太郎さんは過去にベーマガ「Bug太郎のプログラム・タイム」という連載を書かれていたのですが、その4回目のテーマが「三次元グラフィックス」でした。この技術が「GIVERS P3D」に活かされているような気がします。気のせいかもしれませんが。

これが掲載されたタイミングが、メガドライブ用の「エクスランザー」の発売の約2ヶ月前です。Bug太郎さんは「エクスランザー」では3Dプログラムを担当しています。

 

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「DRAGON 'N' SPIRIT」。ベーマガ1987年10月号が初出

(どんどん「ソル・フィース」から脱線しますが、)

友人が勝手に送ったという「SPACE 'N' HARRIER(1987年8月号)」を経て、1987年10月号に「DRAGON 'N' SPIRIT」が掲載されました。元ネタであるドラスピがベーマガの表紙を飾ってから、わずか3か月後。Bug太郎伝説の始まりです。

現在、「DRAGON 'N' SPIRIT」はプロジェクトEGGで配信中です。会員ならタダで遊べます。こういうパロディ的なのが許されるのは凄いこと。この作品は、メインルーチンをBASIC で処理しているのでかなり重たいです。

 

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N-TYPE(ベーマガ1988年4月号掲載)

この後、「N-TYPE」が1988年4月号に掲載されます。前作よりもマシン語の比率を増量。劇的に技術力がアップしているのが凄いところ。「N-TYPE」はページに誤植があって、追加のプログラムが1988年5月号に載っているので注意しましょう。

2回目のベーマガイベントではオールマシン語による「N-TYPE II」が公開されました。

 

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プログラムリスト

「DRAGON 'N' SPIRIT」の起動直後にスクリーンショットを撮ろうとしたら、処理が止まってしまいました。原因はよくわかりません。

「OK」と表示された状態で、カーソルキーが点滅しています。

ここで「list」と打ち込んでみたら、プログラムリストが表示されました。当たり前ですが、Bug太郎さんのお名前があります。PC−8001に触ったような気分を味わえて、得した気分になりました。

ガンマー5 for PC-8801の話

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ガンマー5

プロジェクトEGGで配信中の「ガンマー5 for PC-8801(1986年)」を遊んでみました。

ガンマー5はプレイヤーがパワードスーツで戦うというアクションゲームです。単色のプレーンを使って、なめらかな縦方向スクロールを実現しています。この凄さは今だと伝えるのが難しいです。

 

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「ガンマー5」の広告。ベーマガ1986年7月号より

こちらがベーマガ初登場時の広告です。販売はマイコンソフト。エリア数31とか、6種類の武器とか、キャラクター100種類とか、究極のアクションアドベンチャーとか、壮大なフレーズが並んでいます。地球に衝突しようとしている彗星ミサイルを破壊するというストーリーのようです。
スーパーゼノンと銘打たれている通り、本作は「空間浮遊都市ゼノン(1984年)」の続編です。

 

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ベーマガ1984年10月号より

当時のベーマガにはナムコジャレコアイレムの作品に混ざってゼノンが掲載されていました。全部、マイコンソフトの販売です。
ベーマガでは長きに渡って画面写真が掲載されていたので、覚えている人も多いのではないでしょうか。

 

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ベーマガ1984年1月号付録スーパーソフトマガジンより

ちなみに、ゼノンは元々、電波新聞社主催の「第一回マイコンソフトウェアコンテスト」の応募作品でした。上記の写真ではまだ予選の段階ですが、この後、第一位を受賞します。
ゼノンもガンマー5も「ゼビウス(1983年)」の影響が見られます。当時のパソコンユーザー&ゲームプログラマは「パソコンでゼビウスを遊びたい」という夢に取り憑かれていました。この飢えと渇きは切実なものだったのですが、今だとピンとこないかと思います。パソコンがアーケードゲームのスペックに追い付くにはX68000が登場するまで待たないといけません。

作者の呉英二さんについては7年前に公開されたOBS LIVEが参考になります。

https://www.youtube.com/watch?v=COZJOch6Nrk

呉さんは元教師という異色のキャリア。大学時代は落語研究会。月刊マイコンで長年連載。マイコンソフトブランドで作った「ぽんこつ船サバイバル」「ジャングルショック」。「ゼノン」はハンドアセンブルで開発。移植を手掛けた「PC-8801ギャラクシアン」「X1版ブラックオニキス」。いち早く3Dアクションを採用した「超次元戦士エプシロン3」。そして、呉ソフトウエア工房を立ち上げて「アルゴー」「シルバーゴースト」「ファーストクイーン」を作った、など面白いエピソードが語られています。

 

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画面右側の意味、わかりますでしょうか?

この「ガンマー5」、最初は遊ぶのに難ありでした。

とりあえず遊ぶことはできますが、あっという間にゲームオーバーになります。スクロール速すぎです。弾の連射は不可能。

主にプロジェクトEGGの問題ですが、、、説明書がありません。操作方法はEGGランチャーから「README」ボタンを押して確認します。画面のパラメーターの意味がわかりません。そして、出てくるキャラクターが抽象的でよくわかりません。

というわけで、早くも詰んでしまったのですが、試行錯誤を繰り返して、なんとか遊び方が見えてきました。呉英二さんが書かれた「PC-8801mkIISR/FR/MR活用研究」(石田和久さんと共著)の「GAMMA5コンストラクションゲーム」のページが参考になりました。これを読むと全部のキャラクターに名前が付いている事がわかります。

画面のパラメーターは、こんな意味だと思います。

CB:クロスビーム残弾数

・TB:ツインビーム残弾数

・SB:ソニックビーム残弾数

・MI:ミサイル残弾数

・SL:ソーラーボール残弾数

・BARRYER:バリア残量

・BST.FUEL:エネルギー残量

 

そして、キーのアサインは、こんな感じだと思います。

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6種類の攻撃方法

・[C]or[space]:レーザービーム。無制限で撃てる。

・[Z]:ツインビーム。TBが減る。V字攻撃。

・[X]:クロスビーム。CBが減る。十字攻撃。

・[X]+[C]:ソニックビーム。SBが減る。障害物を透過する。

・[Z]+[X]:ミサイル。MIが減る。格子ドアやバンデタワー(電撃を出す敵)を破壊可能。

・[Z]+[X]+[C]:ソーラーボール。SLが減る。ほとんどのものを破壊可能。

・[shift]:自機が倍速で移動。ブースターのエネルギーが減る。

、、、まさかの同時押し。

高速スクロールで的確にキーを押さないと死ぬという、そういうゲームです。もう、音ゲーみたいなものなので、操作性がどうこう言うレベルではありません。

シフトで移動速度が速くなるというのは、かなり重要だと思います。

ゲームパッドの対応が不完全です。ゲームパッドの場合、Aボタンがレーザー、Bボタンがツインビーム(V字攻撃)。最低でも3ボタン必要なのに2ボタンしか割り当てられていません。ボタンのカスタマイズもできません。なので、キーボードで遊ぶしかないという状態です。

 

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主なアイテム

アイテムはこんな感じです。

他にもゲートを開けて入ったり、エリア間が複雑につながっていたり、このゲーム特有の仕掛けがあります。難易度が異様に高いぶん、攻略のしがいがあると思います。

 

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