シルフィード for PC-8801

シルフィード(1986年)」は1986年12月発売のシューティングゲーム当時のPC-8801mkII SRシリーズのキラータイトルです

いまだとメガCD版とか、PS2版のほうが有名でしょうか。

 

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いきなり脱線しますが、これは1985年11月開催の「PC-8800シリーズなんでもわかるフェア」のチラシです。サプライズ的にPC-8801mkII SRシリーズの新機種「FR」と「MR」を公開するイベントでした。武田鉄矢さんは来ません。

これだけだと「あっそう」で終わりですが、、、

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驚くのは「FR」の価格。最上位モデルはSRよりも8万円も安い17万8000円。PC-8801mkII SRは1985年1月に発売したばかりの人気商品。これを10か月で切り捨ててしまうという暴挙。いや、英断。ここまで思い切ったマイナーチェンジは珍しいです。約一年後には動作速度を2倍にした「FH」を発売しました。進化が早すぎます。

以上の采配によってPC-88はゲームパソコンの地位を固めました。「シルフィード」はそうした時期に登場したゲームです。

 

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自分はPC-88を持っていないので、「シルフィード」を遊ぶことができませんでした。パソコンショップに置いてあるPC-88のデモをじっと眺めてただけです。遊びたいゲームを遊べない、このもどかしさ。

それから17年くらい経って、「蘇るPC-9801伝説 永久保存版(2004年)」に「シルフィード」が収録されました。喜び勇んで遊んでみましたが、あまりの難しさに呆然自失。トラウマを抱えて、ディスクは放置しました。

 

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久々にシルフィードを遊んでみました。これは「蘇るPC-9801伝説」版。プロジェクトEGG版とは、仕様が違うかもしれません。プロジェクトEGG版ってステートセーブ機能があるのでしょうか。

ビジュアル、BGM、全てのクオリティが高いです。効果音もいいですね。

AREA2でボスがちょい見せするのは斬新です。

当時としては極めて珍しいポリゴンの3D表現。「毎秒15枚にも及ぶ高速書き換え」を売りにしてましたが、今だとフレームレートが足りないですね。脳内でフレーム補完する必要があります。

 

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AREA3。

長年ここで終わってました。一気に難しくなります。アイテムが出ません。

敵が斜め特攻ばかりでイライラ。これには斜めに撃つウェポンで対抗します。

 

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AREA4。

最初にALL REPAIRを取ればなんとかなるはず。やはり、AREA3が難しすぎだった。

 

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AREA4のボス。

敵弾が蛇行するのが厄介。これは慣れるしかありません。

 

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AREA5。

自機にくっ付いて邪魔する敵。個性的すぎる。

 

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AREA6手前のデモ。

ゲームの難易度と感動は比例します。大感動です。

裏ワザで見るのとでは重みが全く違います。

 

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AREA7まで行けるようになりました。火力不足でGame Over。

このゲーム、出現タイミングがガチガチに固まっているので、それを覚えることが大事。全ては「慣れ」。地道にアイテムを集め。点数をかせぐ。ウェポンは大事に使う。調子に乗って良い武器を使ったら、次のAREAで困窮する。こういう駆け引きを思いつくあたりが、宮路武さんの凄いところ。

プレイに負担がかかりすぎます。死んだらAREA1からやり直し。仮に20面まで遊んだら1時間かかります。AREA1からずっと息を止めている感覚です。

贅沢言うと、画面更新は毎秒30フレームは欲しい。中断セーブかコンティニューも欲しい。レベル調整も欲しい。あと、星に赤い色を混ぜるのは止めて欲しいです。これは2021年現在の感想です。

今だとありえないくらいストイックなゲームです。当時のPC-8801mkII FHセットは定価で27万円くらい。その金額ぶん気合を入れて遊ぶような難易度に調整しているのでしょうか。こういうパソコンゲーム文化があったこと知って頂きたいです。


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上坂哲さんのシルフィード100の秘密」で言及されているシルフィードの元ネタ、ATARIの「メジャー・ハボック」。

本国では有名ですが、日本のゲームセンターではあまり動いてなかったんじゃないでしょうか。今だと、「ATARI VAULT」で遊べます。

 

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ザカリテの元ネタと思われるATARIの「I,ROBOT(1984年)」。ベーマガ1984年9月号に載ってます。プレイ開始時にボスの頭が表示されます。「(略)100の秘密」ではハッキリと言及されていないのですが、アタリ製で一つ目の宇宙人というと、これしか思い当たりません。

テグザー100の秘密」「シルフィード100の秘密」によると「シルフィード」と「テグザー」の開発は同時期に始まったとのこと。開発の開始は1984年12月から。開発期間は2年半とのことです。「ゼリアード」でも思いましたが、採算が取れるのか心配になります。

一方、「蘇るPC-8801伝説 永久保存版(2006年)」の宮路武さんのインタビューでは開発期間は3年くらい、開発の開始時期はテグザーの半年後に本腰を入れたと語っています。ところどころ食い違います。「(略)100の秘密」で語った開始時期(1984年12月)からFM77AV版発売(1988年3月)までが約3年4か月。そこから、開発が進まなかった時期をどう解釈するかで3年だったり、2年半だったりするのでしょうか。

開発がスタートした1984年12月。当時、ゲームアーツは存在していません(1985年3月創業)。さらにPC-8801mkII SRは発売されていません。

 

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蘇るPC-8801伝説」のインタビューで池田公平(五代響)さんが当時の様子を語ってます。

アスキーにあったプロトタイプのSRを見て、これならいける!と直感を受けて。その後、 NECに押しかけ担当者を拝み倒して、正月休みの間だけという条件で貸してもらいました。わずか1週間ぐらいの間に、ある程度は動く 「テグザー」 の原型を作っちゃった。 で、それを見せてもう少し貸してって(笑)」

池田さんが有能すぎます。当時のアスキーマイクロソフトの代理店だったり、NECにアドバイスをしたり、マニュアル作成を受託したり、強大な権力と技術力を有していました。SRの試作品がアスキーにあっても不思議ではありません。初期のアスキーについては、古川享さんが書かれた「僕が伝えたかったこと、古川享のパソコン秘史」がおすすめです。

会社がない状態で最新機種を貸したNECは立派ですね。ここまでの恩を受けたら、もう他社にはゲームを移植しない。と思ったら、テグザーはあちこちに移植してます。シルフィードFM77AVに移植してるし。細かい話ですが、正月休みにSRを借りるだけだと、12月はほとんど開発ができません。その期間は自前のPC-88を使っていたのでしょうか。

どうやってこんな作品が作れたのか? 記事を読んだ限りだと、宮路さんは複数のバージョンを作り、「どれも面白くなくて」、試行錯誤の結果、あのスタイルに落ち着いたとのこと。この「面白い」「面白くない」は感受性の話で言語化しにくい。

当時のメディアはシルフィードをどう伝えたのか。よく発売の延期で落胆したと語られますが、ベーマガの場合、広告も進捗情報も載っていないので、自分は延期を知りませんでした。発売後、ベーマガ1987年2月号に「シルフィード」が2ページほど紹介されています。記事はAREA5までで終わり。次号でAREA6以降を載せても良かったんじゃないでしょうか。

シルフィードといえば面セレクトが有名ですが、ベーマガでは、翌月の3月号で隠しコマンドを掲載。ラスボスの「グロアール」までネタバレしてますが、ゲームアーツに怒られそうな気が。

 

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「みんながコレで燃えた(略)」に収録されている「AX-6 デモンストレーション(1982年)」です。実行すると、「エーエックス・シックス・バイ・アスキー」とエンドレスで喋ります。何度聞いても別の単語に聞こえますが。

これを作ったのが、三橋正邦(大葉浩美)さん。のちに「シルフィード」の合成音声機能を担当されます。シルフィードの4年前から技術を確立していることに驚かされます。このデモは女性の声ですが、もしご本人の声を入れていたらザカリテっぽくなっていたはず。

ゲームアーツ サウンドドライバ」で検索したら、三橋さんの投稿が出てきました。

catmitsu氏によるゲームアーツの音源ドライバ話 - Togetter

これによると、東大マイコンクラブ時代に作ったA/Dコンバータで声を取り込んでいて、さらにシルフィードでも同じもの使っているそうです。「だから いま マイコン」を読んで、東大マイコンクラブとゲームアーツは「そんなに関係ない」という結論に達していたのですが、ここにきてひっくり返りました。1980年の駒場祭で展示した「万引少女」は合成音声で喋ったとのことですが、その頃から合成音声の研究は始まっていたのかもしれません。

 

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AX-6に収録されているPC-6001用ゲーム「スペース・エネミー(1982年)」。作者は宮路武さん。シルフィードとの関連性は見いだせないのですが、シューティングへの愛情がうかがえます。この作品は「みんながコレで燃えた(略)」には収録されていませんが、説明書のPDFだけが付属していました。説明書にはプログラムリストとダンプリストが載っています。これを打ち込んだら遊べるのでしょうか。

 

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ついでに宮路武さんの作品を紹介。「グランディア」と「ガングリフォン」です。どちらも、RPGやアクションゲームに戦略性を盛り込んでいます。「シルフィード」も戦略性が魅力ですが、宮路さんのシミュレーションゲーム好きが反映されていたのではないでしょうか。

メガCD版の「シルフィード」も遊びたいのですが、中古の本体が高いので、躊躇しています。Switchあたりに移植して頂きたいです。

 

ゲームアーツ関連

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