パソコン落語とサバッシュの話

今、お笑い芸人の「野田クリスタル」さんが人気ですね。特に自作のゲームとの掛け合いでお笑いネタを披露するのが話題になっていたと思います。HSPでゲーム作ってるってのがビックリですが。

番組内では「史上初のオリジナルゲームを使ったネタ」とナレーションが流れてましたが、「オリジナルプログラムを使ったネタ」ならば、他に先駆者が居ます。

三遊亭円丈さんです。圓丈とも書くみたいです。

 

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パソコン落語(ログイン1983年11月号より)

「これからはパソコン落語に燃えるんです」と題した円丈さんのインタビュー記事の抜粋(アスキーの雑誌「ログイン」1983年11月号)。

高座にパソコンを置いて、パソコンと掛け合いをやってます。今から37年前ですね。ブラウン管のモニターがゴツい。

 このインタビューの中で、自分はプログラムが組めるので、お笑いのゲームを作って出したいという主旨の発言をしているのですが、小学館の雑誌「ポプコム」で、わりと早いうちに実現します(1985年あたり?)。

 

その後、円丈さんは「ポプコム」でパソコンゲームの批評を連載。その記事は「ハマッた!円丈のドラゴンスレイヤー という1冊の本になって出版されてます。副題が「(1)シミュレーションゲーム編」ですが、「2」はありません。

 

さらにその後、円丈さんはポプコムソフトの「サバッシュ」というRPGシナリオを担当しています。元々、FM-7が好きで、たぶんドラゴンスレイヤーも好きだろうし、ファルコム・リスペクトなゲームを作りたがるのは必然だなーという気がします。

PC-8801mkIISR版「サバッシュ」が発売されたのが88年。ドラスレ4「ソーサリアン(87年)」とドラスレ5「ドラゴンスレイヤー英雄伝説(89年)」の中間のタイミングで出ています。あと、グローディアは89年に「エメラルドドラゴン」を作ってヒットしますが、いろいろサバッシュから頂いてるふしがあります。

 

「サバッシュ」については円丈さんのWebサイトのアーカイブでコメントがあります。 

https://web.archive.org/web/20180813075812/http://enjoo.com/fan/en_leamono1.htm

プログラマーとデザイナー(グラフィックの?)と大喧嘩をして、プロジェクトから手を引いて、クレジットには円丈さんの名前が載っていないとのことです。この時の開発はグローディア。

 

それで終わったのかと思ったら、円丈さんは5年後に「サバッシュ2」でもシナリオを作っています。フロッピー5枚組の超大作。すさまじい執念ですね。開発はまたまたグローディアらしいのですが、どうやって仲直りしたのでしょうか。

 

先に紹介した「ハマッた!円丈のドラゴンスレイヤー」ですが、なんと「マンガ図書館Z」で無料で読めます

www.mangaz.com

ちなみに、この「マンガ図書館Z」を運営しているのが、赤松健さんで、赤松健さんはボーステックの「パラディン」を作っていますRPGつながりですね。

、、、で、さっそく、読んでみましたが、独特のバッサリとした文体ですね。ゲーム愛を感じますが、間違いをズバっと言い切る厳しさ。これはいかにも喧嘩になりそうな。ズレたことは言ってないので、アングリー・ビデオゲーム・ナードの活字バージョンみたいなものだと解釈できますが。この本が出たのが、わりと後のことなので、サバッシュ関連のエピソードも補足されています。こっちでは「プログラマーと対立した」と書かれてますね。そういえば本の中身がドラゴンスレイヤーと関係ない

 

あと、「サバッシュ」で検索して気が付きましたが、ホエー桑田という方のサイトで、X68000版サバッシュのディスクイメージが無料配布されてました。ホエー桑田さんはX68000版のプログラムを担当していた方だそうです。

www.quarter-dev.info

公開しているディスクイメージは2003年版と2016年版がありますね。

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X68000版サバッシュ(無料)

ためしに2016年版をダウンロードして、エミュレータで実行してみました。問題なく動きますね。あと、本作のシナリオですが、やはり円丈さん特有のバッサリとした文体ですね。ただ、容量も解像度も限られてたパソコンゲームの中では、それがマッチしているような気がします。古風な言い回しも馴染んでます。記号化するって大事だなと思います。

しかしこれ、無料配布しちゃって大丈夫なんでしょうか。ライセンスの表記がないので不安になってきます。