パワーアップル・キャンペーン

Macintoshが30周年だそうですが、「パワーアップル・キャンペーン」で検索しても何も出てこない、ってことに驚いたので、書いておこうかと思います。

「パワーアップル・キャンペーン」というのは、今から20年くらいにアップルが実施した「今、Macintoshを買ったら、PowerPC搭載のCPUアクセラレータボードを優待価格で売りますよ」というキャンペーンです。アクセラレータボードの値段は3万円。元の値段が分からないので、得なのかどうかも分かりませんが、当時最新のプロセッサなのでたぶんお買い得だったのだと思います。
80年代のMacintoshは欲しいけど高すぎて手が出ないというポルシェみたいな存在。完全に別世界のモノという感じでした。92年ごろに廉価版が出て「庶民も買ってもいいんだ」と分かったあたりで、すごい興奮した覚えがあります。
LC2をSTEPで買って、漢字Talk7を入れたら、重すぎて全然使い物にならない状態になっちゃったのは、いい思い出です(よくないけど)。STEPは高飛車に「5つのNo」とか言ってましたけど、いつもお客さんが一杯でした。
当時のMacは68系のプロセッサを搭載するのが主流だったのですが、IBM製のPowerPCに乗り換えるという大がかりな方向転換を予定してました。まるっきり別物のプロセッサになってしまうわけです。PowerPC上で新しく書かれたソフトは「ネイティブ」と呼び、処理速度が速いことをやたらとPRしてました。
なぜアップルの経営者がそんな危ない橋を渡ろうとしたのかサッパリ分かりませんけど、Macユーザーの民族大移動が起ころうとしてました。
将来性のない68系Macは買い控えられてしまう。そこで、「新製品が出るけど、現行機種もアクセラレータがあるんで安心ですよ」という「パワーアップル・キャンペーン」を考えたのだと思います。


▲自分の場合、94年1月に「Centris 610」を購入。2台目に買ったMacです。このCentrisはパワーアップル・キャンペーンの対象機種です。
商品の寿命がとんでもなく短かった時代なので、買った時点でもう、Centris 610は「古い機種」と認識されていました。
ちなみに上の写真の四角いマウスはLC2のやつです。


▲ネットもメールもなかった当時、キャンペーンの申し込みは郵送でした。アップルからは「7月には、お知らせします」という手紙が来てたのですが、いつまで経っても音沙汰がなくて、ブチ切れたんですが、94年8月には無事届きました。代引きで買った人生で最初のモノだと思います。しっかり伝票に「30000円」って書いてますね。

で、やっと、アクセラレータボードを手に入れたまでは良かったのですが、ピザボックスタイプのCentris610は拡張ボードが1枚しか入らないのでボードを入れてしまうと、拡張性が塞がれてしまいます。自分の場合は、キャプチャボードが使えなくなってしまうので致命的。買う前に気付けって感じですが、使い勝手に問題ありでした。
あと、当時はPowerPCネイティブのソフトがどこにもありませんでした。たまに雑誌のオマケCD-ROMでネイティブって書かれているのを動かすことができたのですが、速いんだか遅いんだかも分からずじまい。結局、「速度は追い求めなくていい」と考えなおして、翌年にはアクセラレータボードを売り払いました。
この一連のやり取りでMacintosh熱が冷めたというか、流れから置いてきぼりを食らったような気分になったんですが、なんだかんだでその後、2年くらいはCentrisを使い続けました。


▲そのCentris610ですが、今でも動きます。起動時にハードディスクが回ったり回らなかったりしますけど。