「超連射68K」の話

超マニア向けのシューティングゲーム超連射68K」。開発したのは、ファミベのよっしんさん(以下、よっしんさんと表記)。音楽は柏木るざりんさんが担当しています。最近だと、「X68000 Z」に最新バージョンの「超連射68K」がバンドルされています。

超連射68K」のゲーム性については、別の方が詳しいと思うので、自分はそれ以外の魅力について書きたいと思います。

 

(その1)「爆発が凄い」

超連射68K」は爆発が芸術的です。破片は回転。爆炎は白→黄色→赤→茶色と色彩が変化します。

ボスキャラが爆発した場合、疑似的なレンズフレア、衝撃波、光条、露出オーバー/アンダーなどで「実写のカメラっぽさ」を表現しています。光条が回転するあたりはアニメっぽいかもしれません。

超連射68Kレンズフレアが実装されたのは、Ver.0.25あたりでしょうか? Ver.0.10だと爆炎だけでした。

疑似レンズフレアの表現ですが、当時のゲームで他に思い当たるのはATARI  Jaguarの「ミサイルコマンド3D(1995年)」です。プレステだと「エースコンバット3(1999年)」「スターイクシオン(1999年)」があります。これよりも古い作品があったら教えてください。

 

(その2)「歴史が凄い」

超連射68K」はユーザーの意見をフィードバックしながら、地道に開発が進められました。上の写真はコミケ47~54のサークルカットです。文体にブレがありません。完成させるという強い意志を感じます。

「DIS」は、ディスアセンブルの意味だと思います。

誰か「クロック削り」の解説をしてください。

あと、サターン用パッドのアダプターってのは、どんなものなのでしょうか?

元々、超連射68K」はサークルの名前でした。当初の作品名は「脊髄反射あっちょー2」または「脊髄反射あっちょーDX」。実行ファイルが「SZ2.X」となっているのは、その名残だと思います。C48で「超連射68K」に改名したはずなのですが、サークルカットを見るとなぜかC49まで「脊髄DX」と呼んでいます。

コミックマーケットコミケ)での主な活動は以下のとおりです。

・1994年12月30日、コミケ47-2日目:サンプル版を販売

・1995年8月20日コミケ48-3日目):Ver.0.10販売

・1995年12月30日、コミケ49-2日目:Ver.0.25販売

・1996年8月4日、コミケ50-2日目:Ver.0.35販売

・1996年12月29日、コミケ51-2日目:Ver.0.45販売

・1997年8月15日、コミケ52-1日目:Ver.0.60販売

・1997年12月29日、コミケ53-2日目:Ver.1.00販売

・1998年8月14日、コミケ54-1日目:Ver.1.01販売

(以下略)

 

1994年12月、コミケ47で販売したサンプル版「超連射68K」。価格は200円。ちなみにジャンルは「コンピュータ」でした(同人ソフトというジャンルがなかった)。

サンプル版は自機が無敵で、ゲームとしては遊べません。スプライトの表示デモという位置づけです。ドキュメント(DX_読んで.doc)によると、本編とライブラリ、ツール類を含めて開発に1年を費やしたそうです。サンプル版には「XSP」ライブラリも収録。XSPはよっしんさんが開発したスプライトを大量&巨大に表示するためのドライバ(フリーソフト)です。XSPライブラリは先行してパソコン通信で公開されました。のちに他のサークルからもXSP搭載のゲームが発売されています。

 

超連射68K」の前作に相当するのが、フリーゲーム脊髄反射あっちょー」です。Readme.docによると、開発期間は2週間とのこと。プレイデータをユーザー間で共有できるという発想は「超連射68K」に引き継がれています。それ以外は似てる要素がありません。自機がひたすら弾を避けるだけというコンセプトはDRYさんの「SHOOTING PRACTICE PROGRAM《悟り》」が元ネタ。

 

ゲーメスト」1992年1月号より。

おそらく、「脊髄反射あっちょー」という題名の由来はシューティングゲーム用語の「アチョー」です。こういう用語をゲームの歴史研究家にまとめて欲しいです。

 

1995年8月、コミケ48で「超連射68K」Ver.0.10をリリース。価格は500円。ステージ数は2面+α。

1995年というと、シューティングゲームの衰退。ホビーパソコンの終焉。次世代機の台頭。などなど、ゲームは大きな変革を迎えていました。X68000専用の本格シューティングゲームというのは、同人ソフトにふさわしい、カルト的な存在だったのではないでしょうか。

1997年12月、コミケ53で「超連射68K」最終版 Ver.1.00をリリース。ステージ数は7+α面。

タイムスタンプによると、Ver.1.01が作成されたのが、1998年1月14日です(残機表示の仕様変更とドキュメントの修正)。「超連射68K」の完成日は「1997年12月」と「1998年1月」と2種類の解釈が可能です。

超連射68K」のコミケでの活動は1999年12月まで続きます。最終的には壁サークルにまで上り詰めています。

2001年8月8日、Windows版とX68000版の「超連射68K」がフリーソフトとしてネットに公開されました。ここで一段とブレイクしたと思います。

Windows版は1998年8月(コミケ54)から計画されていたもので、実現までに3年以上が費やされました。この執念深さが他のクリエイターと一線を画しています。

 

(その3)「作者の投稿歴が凄い」

脊髄反射あっちょー」のREADME.docによると、よっしんさんのファミリーベーシック歴は「6年」とのこと。1987年頃からファミリーベーシックに触れ始めて、1993年3月頃からX68000に進出したと推測できます。1987年というと、ベーマガで「ファミコンマシン語教室」が連載された年です。

(*よっしんさんの投稿作品についての記載に間違いがありました。大変申し訳ございません。一旦、該当部分を削除しました。)