ヴァルナ for PC-8801

プロジェクトEGGで配信している「ヴァルナ for PC-8801(1989年)」をプレイしました。ジャンルはアクションRPGです。開発はシステムサコム。

予想外にボリュームがあって驚きました。こんなに超大作なのに、マイナーな印象がある不思議な作品。

できれば予備知識なしで皆さんに遊んで頂きたいので、まずは「ネタバレなし」で紹介したいと思います。ネタバレページはそのうち公開したいです。

 

主人公(プレイヤー)は青年「カミル」。形見の剣の謎を解いたり、失踪した父親を捜すのがゲームの目的です。ゲームはエリノアという村からスタートします。

最初は視点がサイドビュー。「ロマンシア」を連想する感じ。敵と遭遇したら、戦闘もコマンド式で始まります。この時点では「たたかう」を選ぶだけです。

さすがに今、プレイすると不親切に感じます。村人と話しても「いい天気」とか「知りません」しか言いません。

 

本作のグラフィックの担当は近藤敏信さん。その後、「メタルサイト」では近藤さんはグラフィックの他にも、オープニングとエンディングのプログラムも担当しています。

 

村を出ると視点が切り替わって、戦闘がリアルタイムになります。

イース」っぽい見た目。

 

戦闘はシビアです。プレイヤーが剣を振ると、半キャラずれた位置から弾を発射します(距離が近いと剣で攻撃)。敵が半分ずれていると攻撃が全く当たりません。しかも、敵は意図的に半キャラずらしで攻撃してくる場合が多い。「イース」とは対照的です。

 

最寄りのダンジョン、ギャラナーの洞窟。マップは画面切り替え式です。画面が切り替わると敵が一瞬で再生します。頻繁にワープするので、最初はマッピングしないと進めないと思います。

 

このゲームの攻略法は何度も「たずねる」こと。フラグを立てると、少しずつストーリーが進んでいきます。

どこで何もすればいいのか、あっという間にわからなくなってしまうので、総あたりで接触するはめになります。クリアまでに300回くらい「たずねる」と思います。

というわけで、徹底的にプレイヤーに優しくない「ヴァルナ」。攻略しがいのあるゲームです。この時代の空気を感じてください。

 

「ヴァルナ」は音楽が素晴らしいです。プロジェクトEGG版では専用のサウンドプレイヤーが付属します。通常版とサウンドボードII版の2つのバージョンを収録しているのが嬉しいところ。
作曲担当は斎藤学さん。サコム作品で有名な音楽はほとんどこの方が作られてます。

 

ベーマガ1989年3月号より。ベーマガでは「The inside affair of SACOM」というシステムサコムのページが掲載されました。連載期間は1987年9月号~1991年3月号(約三年半)。

「The inside~SACOM」で特に活躍していたのが、斎藤学さんです。誌面での名前は「マサ斎藤」。「まさ」「マサ」「マーサ」だったり、「斎藤」「斉藤」だったり、表記が安定していません。

1987年10月号のスタッフ紹介によると、斎藤学さんは「現役バリバリの高校生」とのこと。1989年3月号の時点で、まだ入社1年目だと考えられます。チョコを催促するというネタは翌年と翌々年にも繰り返されました。

 

ベーマガ1989年5月号より。一部で有名なDOMEネタ。

本来なら「ヴァルナ」を宣伝すべきタイミングなのですが、どこにも載っていません。自由すぎです。

 

ベーマガ1989年6月号より。

3か月ぶりに「ヴァルナ」の名前が登場。本作がマイナーな印象を持つ原因はこのへんにあるのでは?

 

ベーマガ1989年7月号より。近藤敏信(ウヒョ近藤)さんによる4コマ漫画が載っています。

 

ベーマガ1991年3月号より。斎藤学さんの近況報告が載っています。これが「The inside~SACOM」の最終回(第41回)です。残念ながら、この約1年半後に斎藤さんはお亡くなりになりました。

 

以下は「ヴァルナ」とは関係ありませんが、ついでに書いておきます。

TAKERU版「ユーフォリー」。個人的に「システムサコム」といったら、コレ。これも音楽が素晴らしいです。TAKERUで買うと、ラベルは自分で書かないといけません。

「ユーフォリー」は池袋のビックカメラで買ったのですが、千円札が機械の中で詰まってしまって、店員にバカにされたという苦い思い出があります。

 

BEEP」1986年3月号より。16ビットゲーム特集に「ZONE」等が紹介されています。当時はこの映像は大きな衝撃でした。自分にとってPC-9801は完全にビジネス機で、雲の上の存在でした。

当時、システムサコムは「AMD-98」というサウンドボードも発売していたり、技術力の高いソフトハウスとして知られていました。

 

「ムーンボール」はEscキーが外れるくらいキーボードを叩くゲームだったようです。語っているのはシステムサコムの佐藤浩一さん。

「ムーンボール」「ZONE」を開発したのがマーク・フリントさんです。最初はALU corp.に在籍していて、「ZONE」の頃にはシステムサコムに移ったと思われます。

 

「蘇るPC-9801伝説永久保存版第2弾」より。ジーパラのマーク・フリントさんの記事はarchive.orgで読むことができます。

ここで気になるのは「プレイステーション」の単語ですが、どうも言葉通りの意味ではないと思います。

その理由はこちら↓

hipparchus.booth.pm

1991~1994年当時、システムサコムに在籍していたプログラマさんの回想録(無料)。ここに、マーク・フリントさんが「幻のプレステ」用のゲームを開発していたという情報が載っています。斎藤学さんや佐藤浩一さんについても言及していて、当時のシステムサコムを知る貴重な資料です。

「幻のプレステ」はスーパーファミコンとCD-ROMドライブを合体させたハード。このプロジェクトは頓挫して、その後、現在のプレイステーションが誕生しました。ソフトをサコムではなく、ソニーグループで作っていたのが謎ですが、機密度が高すぎて開発機を貸してくれなかったんじゃないでしょうか。スーパーファミコン用ゲーム「ジェリーボーイ」をソニーで販売したり、両社の関係は深かったのだと思います。

ベーマガ1987年11月号の「The inside~SACOM」ではプログラマ紹介として、7名のお名前が掲載されているのですが、マーク・フリントさんは居ません。ここで完全にスルーするのは不自然に感じます。この7名のうちの誰かがマーク・フリントさんなのでしょうか。ベーマガ1988年7月号では「あの幻のマークフリントがファミコン界に挑戦!」と題して、ディスクシステム用ゲーム「ファイヤーロック」を紹介しています。

 

(追記2023/5/2)すみません、見落としてました。「ベーマガ」1989年5月号に「ヴァルナ」が新作ソフトとして1ページ紹介されてました。記事ではノヴェルウェアである点を強調してます。困ったことにラスボスを豪快にネタバレ。

 

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