その昔、自分が遊んでいたX68000版「ローグ」の画面です。厳密には「ローグ・クローン(模倣して作ったもの)」ですが、ここでは「ローグ」と呼ぶことにします。
「README.X68」を確認したところ、公開時期は1989年9月。「ローグ・クローン2日本語版1.2」をKazumi Nasuさんという方がX68000に移植したものと書かれています。
続いて、WonderWitch版「ローグ」です。WonderWitchに付属するCD-ROMに収録されています。
これは「ローグ・クローン2日本語版」を有馬元嗣さんがWonderWitchに移植したものです。28×18文字の画面にスクロール表示させたり、Y1/Y3ボタンでコマンドをメニュー選択できたり、遊びやすい仕様になっています。
最初期の「ローグ」はミニコンで動いていたフリーソフトです。ミニコンというのは大型コンピュータの一歩手前のコンピュータのことです。ミニと言いつつ冷蔵庫くらいの大きさがあります。
書籍「ローグハンドブック(1987年1月発行)」によると、1980年には日本の某大学計算機センターにミニコンが導入されていて、すでに「ローグ」が遊ばれていたとのことです。BSD(OS)に付属するよりも3年くらい早いです。
ググったら、「The Rogue Archive」というGitHubのページがヒットして、大量に「ローグ」のソースコードや実行ファイルが置いてありました。
https://britzl.github.io/roguearchive/
いくつか紹介します。
「Rogue 3.6.1(DOS)」。(上記の画面はDOSBoxで実行しています)
1981年当時の「ローグ」です。本来はBSD版ですが、DOS(IBM PC)に移植してあります。READMEの日付は2000年4月です。
「Rogue 1.0 by Jon Lane (DOS)」。
製品となったDOS版「ローグ」です。タイトル画面に「(C)Copyright 1983 Artificial Intelligence Design」の文字があります。表示がカラフルになって、グラフィック文字が多用されています。プレイヤーが@じゃなくて、('_')みたく表示されます。
1985年にEpyxが発売したバージョン(開発はA.I. Design)。現在、これと同じものがSteamで売られていますが、権利とかどうなっているのでしょうか。
起動すると最初におどろおどろしい化け物のグラフィックが出てきます。キーを押すと、タイトル画面に「Adapted ~ A.I. Design (C)Copyright 1985 Epyx Incorporated」と表示されます。
1985年当時、日本ではパソコン通信が始まり、アスキーネットでBSD版の「ローグ」が遊べました。当初、ホストコンピュータ(ミニコン)との通信には音響カプラ(約5万円)が使われていたようですが、すぐにモデムが主流になりました。
「ローグ」のプレイ中はずっと電話代がかかります。当時のユーザーは「電話を通してすごいゲームを遊んでいる」というところにロマンを感じていたと思います。
当時のアスキーは積極的に「ローグ」を紹介していたようです。
・「ログイン」1985年8月号の「ログイン読んでLOG INしよう」という連載の中で「ローグ」を短く紹介しています。「VAN」は誤植です(正しくはVAX)。「リアルタイムRPG」と書かれていますが、これはどういう意味なのか。漫画部分は、すがやみつるさんが担当されています。
・「ログイン」1985年9月号では「ローグ」を4ページほど紹介しています。「実はASCIINETには最高におもしろいゲームがある」。
・「パソコン通信ハンドブック実践編」(1985年10月24日発売/奥付は12月1日)では「ローグ」を2ページ半ほど紹介しています。「ローグ」の起動方法やキーアサインが載っています。
・すがやみつるさんの 「すぐできるパソコン通信」(1986年9月8日発行)では「キミは”@”の勇者を見たか?」と題して、「ローグ」を2ページほど紹介しています。
「BEEP」1986年3月号より。
1986年当時、アスキーがPC-9801版「ローグ」を発売。価格は1万2800円。表示は英語(日本語非対応)です。
「ASCII」と「ログイン」1986年2月号には次のような広告が載っています。
かつては知的エリートだけがその存在を知り、奥深い戦略と緻密な戦術を競っていたオンライン・ゲームの傑作、あの"ROGUE"がついにパーソナルコンピュータに移植された! "ROGUE"は、ミニコンVAX上のUNIX環境で生まれたロールプレイングゲームであり、現在、パソコン・ネットワークの「ASCII-NET」でも最高の人気ゲームとなっている。プレイヤーは財宝と栄光を求める勇者となり、暗く奥深い"Dungeons of Doom" (運命の洞窟) へただ一人で入ってゆく。そこは怪物や罠などの危険と黄金や魔法の宝物などの財宝に満ちあふれた異世界なのだ。NEC、PC-9801シリーズへの移植版が完成。高速モード、ナンバーロック機能、Fake-DOS機能をサポート
、、、「Fake-DOS」ってのは一体?
当時の「ログイン」の広告を簡単にまとめてみました。
PC-8801版「ローグ」は1987年9月18日発売。この情報って信頼できるのでしょうか。そうなると1986年11月号の「10月下旬発売予定」ってのは? 1年近くも発売延期したってことでしょうか。
MS-DOS版「ローグ」は知らないうちに発売されました。PC-8801版と同時期? 「ログイン」1987年1月号に「動作対象機種はFM-16β等。他の対応機種についてはお問い合わせください。」との注意書きがあります。
X1版「ローグ」はおそらく未発売です。
(MS-DOS Playerで実行しています)
1988年にはMS-DOS版「ローグ・クローン2日本語版」がパソコン通信で公開されました。PC-8801版の発売から約1年後ということになります。
「ローグ・クローン2日本語版」はTim Stoehrさんが作った「ローグ・クローン2」を大田純さんがMS-DOSに移植&日本語化したものです。対応機種はAX/PC-9801/PC-100/if800。先に紹介したX68000版やWonderWitch版はこれの移植版です。
(2じゃない「ローグ・クローン日本語版」も存在するはず。未確認です。)
「ローグ」が無料で遊べる、しかも日本語版ということで、人気を博しました。「ローグ・クローン2日本語版」は今でもVectorからダウンロードできます。